南洋群島への慰霊の旅、6月に実施 広がる次世代の参加 


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肉親らを思い、手を合わせる南洋群島帰還者会の上運天賢盛会長(右)と遺族=2022年12月、サイパン島のおきなわの塔

 太平洋戦争で日米両軍の地上戦が行われた旧南洋群島の県出身戦没者を追悼する「南洋群島慰霊と交流の旅」が、今年6月に国際旅行社(那覇市)主催で行われる。昨年12月に3年ぶりに再開し約20人が参加。今回は30人あまりが参加予定で同社は4月28日まで参加者を募っている。戦争体験者らが少なくなる中、南洋群島での戦争の記憶を風化させない取り組みとして期待されている。

 サイパンやテニアンなど、旧南洋群島からの県出身引き揚げ者でつくる「南洋群島帰還者会」は2019年に組織としての現地訪問を終了した。ただ遺族からの希望も根強く、22年12月に国際旅行社が主催し現地ツアーを再開。22年には10~90代の22人が個人として参加した。南洋群島帰還者会の上運天賢盛会長(91)は「帰還者会の会員はほぼ全員が90代。若い世代の人たちが慰霊を続けていってもらうことは心強い」と話す。

 22年8月には、帰還者会の活動を継承しようと引き揚げ体験者の子や孫などでつくる「旧南洋群島帰還者会を継承する会」が発足した。呼びかけた比嘉俊雄さん(53)は曽祖父がサイパン移民1世で、祖父や親戚をサイパンやテニアンで亡くした。「帰還者会と一緒に活動しながら自然に活動を引き継いでいきたい」と話す。継承する会のメンバーは30~70代の14人に増えた。

 今回のツアーに参加する継承の会の兼城次男さん(60)は祖父母と、父親の姉と妹がサイパンで亡くなった。「われわれ世代ができることは何かと考えると、み霊に手を合わせることだ。現地の人との交流もしていきたい」と話す。

 今回のツアーは6月1日に出発し、昨年同様、希望者は3日にテニアン「沖縄の塔」を日帰りで訪問。4日はサイパン「おきなわの塔」で追悼を行う。問い合わせは国際旅行社(電話)098(864)5931。

 (中村万里子)