「お父さん?」里子から電話もすぐに切れ 「子どもの声を聞いて」 元里親夫婦、行政を提訴した思いを語る


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提訴後の記者会見で思いを語り、目頭を押さえる元里親=27日午前、県庁(小川昌宏撮影)

 どうか子どもの声を聞いて―。里親委託措置解除事案を巡り、国家賠償法に基づき県を提訴した那覇市在住の50代元里親夫妻は27日、代理人弁護士とともに県庁で会見を開いた。児童の委託解除ありきで、強引な対応をした児童相談所と県の不当性を強く訴えた。ただ、夫妻が一番大切にしたいのは、養育していた児童の思い。児童の気持ちを第一にした対応を県に求め、実母には「この子が幸せに過ごし成長していけるよう、協力していく思いです」と、メッセージを送った。

 夫妻が生後2カ月から5年以上養育した児童は、2022年1月4日に一時保護され、その後、県内の別の里親に委託されている。夫妻によると、今月23日には児童から電話があった。夫が携帯を取ると「お父さん?」と声がし、「○○ちゃん?」と聞き返すと、声を潜めて「○○ちゃんだよ」と話し、すぐに切れたという。

 外部有識者による調査委員会が今年2月にまとめた報告書は、児童に夫妻が実親ではないと一時保護所で知らされた後も、児童が「変わらずに会わせてほしいと訴え続けている」と記載。児童の度重なる求めを、児相が無視し続けたと指摘した。委託解除から1年3カ月たっても夫妻に思いを寄せる児童の行動に、夫は「私たちだけが会いたいわけではないということだ」と語る。

 裁判は金銭が目的ではなく「つらい思いをさせられている児童を一人でも減らしていくため」という。一時保護後、夫妻と児童はオンラインで一度面会したのみで、裁判中はさらに交流が遅れる恐れもある。妻は「一刻も早く児童の心のケアをしなければ取り返しがつかなくなる。児相は1人の人間の人生を振り回し、壊したことを認めて」と震える声で訴えた。

 玉城デニー知事は提訴について「内容を確認して今後の対応を検討していきたい」とコメントした。
 (嘉陽拓也)