【深掘り】大臣級が働き掛けも米軍の譲歩引き出せず 嘉手納基地の防錆格納庫計画 顧みられなかった地元の反発 「日本は格納庫一つ・・・」 


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米軍嘉手納基地における防錆整備格納庫の整備計画について、當山宏嘉手納町長(左列奥から2人目)らに計画を説明する小野功雄沖縄防衛局長(右列手前から2人目)ら=28日午前11時ごろ、嘉手納町役場

 建設予定地の位置の変更が焦点となっていた米軍嘉手納基地の防錆(ぼうせい)整備格納庫の建設計画を巡り、防衛省や外務省は28日、嘉手納町が反対していた住民居住地に近い旧駐機場「パパループ」で予定通り整備を進めることを町と沖縄県に伝えた。地元の代替案を退け、閣僚級を巻き込んで行われた日米交渉にも関わらず結果を出せず、「日本は格納庫一つ動かせないのか」(県政与党関係者)と批判の声が上がった。

 ■工程の遅れきらった米軍

 「米軍側が唯一の建設場所だとすることは、容認できない」。政府の説明を聞いた嘉手納町の當山宏町長は、いら立ちをあらわにした。

 防錆施設の整備計画に地元で反発が広がると、政府は建設場所の再検討や移設に関する提案を米側に実施した。1月の日米防衛相会談では浜田靖一防衛相からオースティン米国防長官に、外相会談でも林芳正外相からブリンケン米国務長官に働き掛けた。

 だが、米軍は大臣会談に先立つ2022年度末に既に格納庫整備の予算を確保しており、暗雲が立ちこめ始めていた。

 日米両政府は移設理由として、完成して50年以上が経過している現行施設の老朽化を強調するが、格納庫の能力向上という狙いも大きい。関係者によると、防錆作業は1機当たり5日間かかり、全ての航空機の対応で年間200日ほどを計画している。現行施設で格納できない大型機を嘉手納基地外で整備すると「非効率」(政府関係者)との考えもあった。

 別の政府関係者は、計画変更となれば設計自体を見直すことになり、事業の工程が大幅に巻き戻ることになると指摘。「防錆作業ができず、かえって事故が起きかねない。選択の余地がなかった」と声を落とした。  その上で、町側に岩国飛行場にある防錆整備格納庫の視察を提案するなどして「引き続き理解を得ていきたい」と話した。

 ■「屈辱の日」の決定報告、繰り返される強行

 政府は地元説明で「影響を最小限にするための措置」として、使用する化学物質は、在日米軍が基地での環境汚染物質の取り扱いや環境保全の方法を定めた「日本環境管理基準(JEGS)に従って処理」するなどの4項目を挙げ、予定通りの整備に理解を求めた。これに対し県幹部は「基準を守るのは当たり前の話しだ」と眉をひそめた。

 當山町長は「基地内の事故は、管理の不十分さや人為的要員が多かったと認識している。(こうしたことが格納庫で)起こらないという考え方を国として持っているのか」と語気を強める。措置に本当に実効性があるのか、多くの不安を積み残したままだ。

 政府が地元説明を行った28日は、1952年にサンフランシスコ講和条約が発効し、日本が独立すると同時に沖縄が切り離された「屈辱の日」と重なった。県政与党議員の一人は「沖縄がいくら抗っても関係なく強行すると、節目の日に示した」と日米の姿勢を疑問視した。  (知念征尚、明真南斗)