残業削減、乏しい実感 教員の長時間労働 「帰宅圧力」で仕事持ち帰り


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 文部科学省が28日に公表した教員勤務実態調査は、業務削減が進んでも抜本的な長時間労働の解消はなお遠い現状を浮かび上がらせた。管理職の帰宅圧力が持ち帰り仕事につながったとの声もあり、現場の多忙感は消えない。今後は、残業代を支給するための法律見直しが注目を集めるが、財源の壁が立ちはだかる。

自動音声

 「後日、受付時間内にご連絡ください」。午後5時過ぎ、横浜市立川井小にかかってきた電話は自動音声での対応に切り替わる。教員が自分の仕事に集中して残業を減らすための取り組みだ。窪田剛久校長は「どこかで線を引かないといけない。思い切って昨年度より1時間早めた」と話す。

 文科省によると昨年秋時点で、こうした電話対応は全国の教育委員会の6割弱が導入。登下校の見守りを住民に委ねたり、給食費徴収を自治体側が担ったりする働き方改革も進む。同省幹部は「勤務実態調査でも成果が見えた」と胸を張る。
 

闇残業横行

 だが、文科省の残業時間上限を超える中学教諭が8割近くに上るなどの調査結果で、仕事が楽になったとの実感に乏しい。神奈川県の公立中の30代男性教諭は「午後7時でも職員室に10人以上が残っている」と話す。校外向け報告書の作成に追われ、授業準備がおろそかになりがちだという。

 「校長が帰宅を促すので持ち帰り仕事が大幅に増えた」と打ち明けるのは大阪府内のベテラン小学校教諭。残っているととがめられるため、プリントや学年便りを自宅で作成する若手が目立つといい「闇残業が横行している」と憤る。

 他県では、夕方にタイムカードを押して仕事を続けるとの証言もある。

 中学で残業の温床とされてきた部活動の改革には暗雲が垂れこめる。スポーツ庁の有識者会議は2022年、民間事業者らに運営を委ねる「地域移行」を25年度末までに達成するよう求める画期的な提言を公表した。

 だが、指導者確保などに不安を抱く自治体側の抵抗が強く、国の正式な指針では目標時期を曖昧にして「地域の実情に応じて可能な限り早期の実現を目指す」と修正された。

 腰砕けの現状に、サッカー部顧問を務める兵庫県の公立中教諭は「外部委託の仕組みや指導者をそろえてから決めるべきだった。移行のゴールだけ設定され、現場は回っていない」と語る。
 

働かせ放題

 さらなる残業時間削減へ、教育関係者らが期待するのが教職員給与特別措置法(給特法)の見直しだ。公立校の教員に残業代の代わりに給与月額の4%相当の教職調整額を支給するとした同法は、実態に見合わず「定額働かせ放題の元凶」と強い批判を浴びてきた。

 残業代支給を可能にするような抜本改正なら処遇改善と業務削減が大きく進むと予想されるが、調整額引き上げの小幅改正だけでも数百億円規模の支出が必要とみられ、財源が最大のネックだ。

 与党には新たな手当の創設で賃金アップを図る案も浮上。だが「残業代でなければ、管理職が『無制限に働かせても問題ない』と考える現状のままだ」(秋田県の公立小教諭)との見方があり、文科省幹部は「大きな改革ができなければ失望の声が上がるかもしれない」と表情を曇らせた。

(共同通信)