長時間の作業が「秒」に劇的改善 子どもの居場所への食料配分、AIアプリがマッチング 琉大・大学院生が挑んだ社会課題の解決


この記事を書いた人 琉球新報社
AIアプリ「うむゆい」を開発した琉球大・大学院生と「ローコード」を提供した「BlueMeme」、おきなわこども未来ランチサポートの富田杏理代表(前列左端)=4月27日、西原町の琉球大学

 「子どもの居場所」に提供するために集められた食料品の分配をするAIアプリ「うむゆい」を、琉球大・大学院生が企業と共に開発した。子ども食堂などに食料支援をする「おきなわこども未来ランチサポート」で実証実験が始まっており、これまで分配業務を一人で担ってきた富田杏理代表は「1時間半かかっていた配分作業が数秒でできるようになった」と効果を語った。

 配分する食料には、消費期限が短い生もののほか、長期保存が可能なもの、調理が必要な乾麺類などさまざまある。配分は受取先の希望や子どもの人数、調理環境の有無などを考慮する必要があるため、時間がかかることが課題だった。

 この配分作業の効率化を図る「うむゆい」は、「集まったうむい(思い)と子を結びたい」という思いから名付けられた。開発には工学部の宮田龍太助教が声をかけた、森根逸心さん(21)=同学部4年、陸煒(りくい)さん(24)=理工学研究科博士課程1年、盛拓矢さん(25)=同2年、伊禮司さん(31)=同3年=の4人が参加。「BlueMeme(ブルーミーム)」(本社東京)からプログラミングの高度な知識を不要にするソフト「ローコード」の提供を受けた。

 「うむゆい」では、これまで富田さんが行った分配実績を陸さんがデータ分析し、森根さんらがシステム化した。アプリで集まった食料と受取先のデータをマッチングさせ、分配案を作成することを可能にした。

 富田さんは「子どもたちへ届ける物資は基本的に不足している。アプリによって削減することができた作業時間を、今後は他の企業などへの呼びかけに使える。活動がさらに広がる」と期待を込めた。学生にとっても大きな収穫となった。盛さんは「アプリ開発をしたくて始めたことだが、その中で子どもの貧困問題の深刻さを知った」と、新たな気付きがあったという。

 森根さんも「沖縄の実情を知らなかった。アプリがそうした問題の解決の一助になればうれしい」と述べた。陸さんは「今学んでいることが社会問題の解決に役立てられると知った。今後も自分の力を役立てたい」と意欲を語った。
 (嘉数陽)