10人でお昼ご飯を食べに行く時、9人がラーメンを食べたいと言い、1人がハンバーグと言ったら、ラーメンに決定することがよくあるでしょう。でもハンバーグを食べたい人が3人で、ラーメンが7人になったら、ラーメンを選んだ中から「ラーメンでもいいのかな?」と疑問に思う人が出てきて、ハンバーグが4人でラーメンが6人になったら話し合いで決めるでしょう。
ハンバーグを食べたい一人の人は小麦粉アレルギーで、麺が食べられないのですが、どうしてハンバーグが食べたいのか理由を聞かれないし、自分だけが別の意見だとなかなか言い出せません。しかし自分が3割に入ると「どうしたの?」と聞いてくれる人が出てきて、4割に入ると話し合いが持たれ、自分の考えを伝えやすくなるのです。ラーメンを食べたいと言っていた人たちも、アレルギーという理由を聞いたら、では今回はハンバーグにしようか、もしくは回転ずしにしようか、となるかもしれません。
マイノリティーをはじめ特別な事情を抱える人の思いは、聞いてくれる場所が少ないので言葉にもされにくく、見えにくいです。多数決は平等に決定を下すいい手段のように見えますが、アレルギーや障害など、配慮が必要な人にとっては不公平さを生み、時には暴力的にもなります。数ではなく話し合いをし、できる限りお互いが幸せになれる方法を見つけていくことこそが大切でしょう。それができてはじめて、一人ひとり異なる人同士が対等になれるのです。
新年度が始まり1カ月。新しい環境や人間関係にも少しずつ慣れてきた頃でしょう。ルールをつくる時、自分の考えを大切にしながらも、反対の意見を持つ人に「どうしてそう思うの?」「お互いにとっていい方法を見つけたいね」と言えるようになりたいですね。小さな意見を拾うことは時間がかかり、めんどうくさくも感じますが、小さな声ほど無視されがちで、より配慮が必要です。一人ひとりの違いを大切にすることが、たくさんの人を幸せにする鍵です。一度決めたルールも、合わない人が出てきたら考え直してみるのもいいでしょう。
そして自分だけがまわりと違うと孤独を感じている人も、諦めずに「今は一人だけど、きっと味方が増えてくる」と信じて、安心できる人にだけ思いを伝え続けていきませんか。きっと少しずつ味方が増え、あなたの一言が大きな力になる日が来ると思います。
いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。