沖縄県憲法普及協議会などが主催する憲法講演会「新たな戦前を迎えないために~教育とメディアの意味を問い続けて」が憲法記念日の3日午後1時半から、浦添市のアイム・ユニバースてだこホールで開かれる。講師は、映画監督で毎日放送ディレクターの斉加尚代さん(58)。初監督の映画「教育と愛国」は教育や学問に対する政治介入を描き、2022年度日本ジャーナリスト会議(JCJ)大賞を受賞するなどした。沖縄をテーマにしたドキュメンタリーもある斉加さんに、沖縄への思いなどを聞いた。(聞き手 金良孝矢)
―講演依頼を受けた理由は何か。
「力不足と躊躇(ちゅうちょ)したが、(協議会会長代行の)加藤裕弁護士から映画を踏まえ語ってほしいと言われた。映画は沖縄で反響が大きかった。学問の自由の理念と同時に、憲法の平和主義が最もむしばまれているのが沖縄だと思う。伝えるメディアの役割を果たす上で、依頼を受けた」
―沖縄との関わりや思いを教えてほしい。
「初めての沖縄でのドキュメンタリーが、15年放映の『なぜペンをとるのか~沖縄の新聞記者たち』だった。大阪出身の作家・百田尚樹氏が『沖縄の新聞社はつぶさなあかん』と発言するなど、ヘイトの発信源が大阪だった。大阪のメディアとして、何とかしないと収まらない気持ちになった。メディアの危機を沖縄から痛感した」
―沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)記述の教科書問題、自衛隊の「南西シフト」をどう受け止めるか。
「常に沖縄は、さまざまな事態の変化を感じ取る最前線だと思う。教育現場ではよく『戦争は教室から始まる』と言う。教育は子どもたちを幸せにする希望であると同時に、国家権力の道具になった時は、子どもたちを不幸に陥れる側面がある。(南西シフトを進める)今の日本政府は、過去の日本軍にとって不都合な歴史を消そうとしているように見える。だからこそ、政府が不都合と見なす歴史をより語らないといけない」
―講演で県民に何を伝えたいか。
「今の政治の状況がおかしいというテーマで、多くの人とつながっていけることに希望があることを話したい。教育の独立は、メディアの独立と同じ。その価値を共有することで、国が誤った道に進まないためのブレーキになるのではないか」