琉球新報が県議、国会議員を対象に実施した憲法アンケートでは、平和主義を掲げる憲法が制定から76年を経た今も高く評価されていることが明らかとなった。一方で個人の権利が尊重される社会情勢の変化などを踏まえて、憲法改定を求める声も高まりつつある。安全保障環境の変化を背景とした自衛隊の能力向上に向けた安全保障関連3文書が昨年末に閣議決定されたが、県内では南西諸島への自衛隊配備や反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有といった軍事力強化の流れに賛成する意見は過半数には達しなかった。
<南西諸島の自衛隊強化>南西諸島の自衛隊強化
対中国を念頭にした南西諸島への自衛隊配備強化については「賛成」が25人(43.1%)、「反対」が28人(48.3%)、「どちらとも言えない」が5人(8.6%)となった。反対が賛成を若干上回り、県政与党、野党、中立会派で賛否が明確に分かれた。
沖縄・自民の県議18人は「賛成」した。「島民の命と安全を守ることは絶対不可欠な命題であり、無防備の状態では島民の安全が保障できない以上、自衛隊配備は当然」だと回答した。
「反対」の立場を示した仲村未央氏(立憲おきなわ)は「沖縄を『捨て石』とする前提で進められており、軍事拠点は真っ先に標的となる。またもや県土は火の海になる」と懸念を示した。
一方、3月に自民党を離党した照屋守之氏(無所属)は「どちらとも言えない」を選択した。自衛隊配備は「抑止力になっている」との認識を示しつつ「地域住民・県民の理解を得ることも重要だ」との認識を示した。
国会議員では、西銘恒三郎衆院議員(自民)は「他国との比較で(防衛力が)50対50のバランスでなくとも、国家としての意思を示しうる」と、防衛力強化の重要性を語った。
赤嶺政賢衆院議員(共産)は、自衛隊や米軍が民間空港や港湾の利用を進めようとしているとして「軍民を混在させないというのが沖縄戦の教訓だ」と強調。「日米で沖縄を軍事要塞(ようさい)化することは断じて認められない」と厳しく批判した。
(知念征尚)
<反撃能力の保有>賛否拮抗、憲法解釈に違い
政府は昨年末に閣議決定した安全保障関連3文書で反撃能力(敵基地攻撃能力)にも活用できる長射程ミサイルの保有を決めた。専守防衛を定めた憲法規範を超えるといった疑念があることからアンケートでは敵基地攻撃能力の保有については「反対」が28人(48.3%)となり、「賛成」の26人(44.8%)を若干上回り、賛否はおおむね拮抗(きっこう)した。「どちらともいえない」は4人(6.9%)だった。
反対と回答した元憲法学者の高良鉄美参院議員(沖縄の風)は「敵基地攻撃能力を反撃能力と言い換えたのは先制攻撃になる危険性を認識していたからだ。先制攻撃は憲法9条2項で保有が禁じられている『戦力』だ。敵基地攻撃能力保有は憲法違反であり許されない」とした。
一方、賛成と回答した国場幸之助衆院議員(自民)は「反撃能力と憲法の整合性に関しては、1956年から一貫して合憲とされてきた。近年、中国は2千発ともいわれるミサイルを保有する。外交と抑止の強化のためにも反撃能力の保有は必要」とした。
「どちらでもない」と回答した県議会中立会派「無所属の会」の大城憲幸県議は「全てを否定するものではないが、(一方が軍拡を進めるともう一方も軍拡を進めて軍拡競争となる)『安全保障のジレンマ』の問題やどこに配備するのかなど、国会や国民的議論が不十分ともいえる」とした。
(梅田正覚)