「ちやんぐとーる理由ぬあてぃん何時ぬ世までぃん、戦(いくさ)さびらんでぃ言るくとぅ、約束(やくすく)さびーん(どんな理由があってもいつの時代でも、戦争しないことを約束している)」
那覇市の首里城公園で3月、西原町の認可保育園「さうんど保育園」の年長児17人が、しまくとぅばで憲法9条の理念を元気よく読み上げた。企画したのは園長の宮城茂光さん(70)と主任保育士の妻、優美子さん(59)だ。3日は憲法記念日。2人はロシアのウクライナ侵攻や自衛隊の南西シフトなどが進む現状を憂いながらも、子どもたちが憲法の平和主義を考えるきっかけになることを願う。
同様の取り組みは過去に一度やっていた。2001年9月の米中枢同時テロで米軍基地のある沖縄も緊張が高まった頃。優美子さんは「おくにことばで憲法を」(新日本出版社)という本に出合った。首里のしまくとぅばで憲法9条の理念を表す文に「生きている言葉で、すんなり心に入る」と感じ、数年後、劇に取り入れた。それから十数年。憲法9条の重要性は増していると感じる。
子どもたちはしまくとぅばや憲法9条の意味を少しずつ理解しているという。けんかがあると、「戦争になるよ。駄目だよ」とたしなめる子どももいた。
那覇市で今年1月、弾道ミサイルの飛来を想定した住民避難訓練があった。茂光さんは防災頭巾姿の子どもたちにショックを受けた。「戦争が近くなっている。子や孫の世代がとても心配」と危機感を募らせる。
茂光さんは沖縄戦で姉を亡くした。戦後生まれだが、周りから戦争の悲惨さや平和の大切さを教わってきた。戦争体験者が少なくなり、憲法9条改憲の動きに不安も感じるが、沖縄の先人たちが空手や芸能などで各国と交流してきた歴史に望みも託す。
「文化交流で戦争を回避することが大事だと思う。憲法は私たち国民が国を縛るもの。常にそのことを訴えないといけない」。園児でもある孫を抱きながら、2人は憲法9条の理念を次世代につなぐ。
(金良孝矢)