台湾・中国、双方の関係は 張智琦氏(元苦労網記者 現出版社編集者) 李鎮邦氏(香港理工大助理教授)<「台湾有事」回避目指すシンポ>2現状報告


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「台湾有事」の回避を目指すシンポジウム(「台湾有事」を起こさせない・沖縄対話プロジェクト主催、琉球新報社共催)が4月29日、琉球新報ホールで開催された。沖縄と台湾双方からジャーナリストや研究者、市民ら5人が登壇し、台湾や中国、双方の関係や沖縄の現状を報告。日米が果たしてきた役割や今後の展望を浮き彫りにした上で、東アジア地域での紛争を回避するために沖縄と台湾地域の連携を強める重要性を確認した。シンポジウムの様子を報告する。(沖田有吾、知念征尚、佐野真慈、梅田正覚、與那原采恵)


沖縄戦の教訓生かせ 張智琦氏
 

張智琦氏(元苦労網記者 現出版社編集者)

 近年の両岸関係は緊張している。蔡英文政権は兵役を延長し、米国からの兵器購入額が過去最高を記録するなど軍事化している。蔡政権は、戦争への備えは戦争を回避する唯一の方法と主張しているが、軍事的対立の激化が戦争の可能性を高めているように見える。大規模なプロパガンダがされ、最後の1人まで戦うことをいとわないという主張もある。少数の人々が戦争に反対して交渉や交流を求めても攻撃され、中国共産党の仲間と指摘されることもある。

 しかし、戦争に対する考え方は非現実的な想像に基づいている。この点で、沖縄は台湾に深い意義を示してくれる。

 沖縄の米軍基地も台湾も、米国が中国を封じ込めるための橋頭堡(ほ)として機能し、台湾海峡で戦争が起きれば巻き込まれることは避けられない運命共同体だ。しかし、決定的な違いがある。台湾は沖縄のような地上戦を経験せず、米軍基地による被害も知らない。沖縄が平和教育を積極的に推進し、強い反戦へと展開してきたのはまさに生きた教訓によるもので、この視点は台湾に今一番欠けていて学ぶべきものだ。

 沖縄の平和意識を理解できれば、台湾でも平和という選択肢を持つことが必ずできるはずだ。民間交流を深化させ台湾、沖縄両者で団結して戦争を回避する必要がある。


対立の背後には米国 李鎮邦氏(香港理工大助理教授)
 

李鎮邦氏(香港理工大助理教授)

 私は台湾釣魚台教育基金会の代表として、台湾漁民の立場で台湾有事について報告する。「釣魚台」とは日本では尖閣諸島の名称で知られており、会はこの島々の保衛運動(領土返還運動)をしている。

 1971年、米国は釣魚台の行政権を日本に移管することを一方的に発表すると、当時、海外留学していた知識人が米国に対して激しい抗議を行った。しかし冷戦下で当時の台湾当局は何の行動も起こさなかった。

 基金会はこの知識人による活動だった。2010年からは、これまで軽視されてきた漁民と知識人による保衛運動を掛け合わせている。

 現在、台湾漁民が経済的苦境に陥っているのも、安全保障上の不況をもたらしているのも、全て日本とその背後にいる米国が仕掛けたものだ。

 米国はまぎれもなく、釣魚台の管理を無責任、もしくは意図的に日本に委ね、今日のような安全保障のジレンマを作り出した。釣魚台を通じて日本と台湾、中国大陸を巻き込んだ米国は地政学的な安全保障上の配当を得ている。台湾有事論は、日米安保の拡大で、日本の一部ではない台湾を安全保障の対象にしたことの結果と言える。平和は最高原則ではなく、政治家の気まぐれで操作されるおもちゃであることを証明している。