沖縄県の検査体制 自己負担などハードルに <じぶんごとで考えよう HIV/エイズ>3


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 沖縄県は、2020年の新型コロナウイルスのパンデミック以降、保健所のHIV検査を中止しました。21年11月に一部再開したものの、感染再拡大を受け、22年7月17日現在、那覇市保健所のみ検査を継続しています。

 現在の沖縄県の検査体制は、後天性免疫不全症候群(エイズ)に関する特定感染症予防指針で定める内容からすれば、不十分といえます。

 そのような中、重要な役割を担っているのが、20年4月に5カ所から始まったHIV検査協力医療機関の存在です。現在、協力医療機関は6カ所となり、県内の新規陽性者を確実にエイズ治療中核拠点病院の治療につなげる役割を担っています。

 しかし、現在の検査体制にはいまだ多くの課題があります。保健所とは違い、自己負担や実名(一部匿名可)での受検がハードルとなり、検査を受けたくても受けられず躊躇(ちゅうちょ)している間にエイズを発症したという情報もあります。

 コーディネーターとしては、HIV検査を受けられる機会が十分に提供されないことで起こる問題として大きく3つのことを危惧しています。

 (1)個人に起こる問題。検査が十分に受けられない場合、免疫不全が進行し、エイズを発症するリスクが高まります。そうした場合、入院治療が必要となり、学校や仕事を休まなくてはなりません。またエイズを発症すると入国できない国もあり、多少なりともライフステージに影響が生じます。

 (2)社会・公衆衛生上の問題。仮に陽性の場合でも早期診断、早期治療をすることは自身の健康を守るだけでなく、パートナーや子どもなど、他者への感染を防ぐことにつながります。

 (3)医療資源の問題。県内でエイズを診療・治療する機関は3カ所(琉球大学病院、県立南部医療センター・こども医療センター、県立中部病院)のみで、医師、看護師のほか、ベッドの確保等、医療資源に限りがあります。患者の増大は医療のひっ迫に繋(つな)がります。

 このような点からも、沖縄県は一日も早く安定した検査体制を構築することが急務です。

 読者の皆さまには、早期発見が重要であるということをご理解いただき、自分のため、パートナーのためにも検査を受け、今の身体の状態を確認しておくことをオススメします。

(新里尚美、琉球大学病院第一内科・県感染症診療ネットワークコーディネーター)