小さくても できるんだ 竹西夢貴さん 八重山特支小6年 うれしさ、悔しさ 力に変え「夢は新聞記者かカメラマン」【こどもの日2023】


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平日の午前中、図書館で新聞を読む竹西夢貴さん =1日、石垣市宮良の八重山特別支援学校

 【石垣】人懐っこい笑顔の裏にあるのは喜びだけじゃない。「悲しいこと多々、その分うれしいこともあった」。石垣市の県立八重山特別支援学校小学部の6年生、竹西夢貴(ゆめたか)さん(11)は生まれつき骨が折れやすい骨形成不全症のある体で生まれた。身長103センチの小さな体に、うれしい、悔しい、うらやましい、いくつもの思いを詰めこんでいる。思いを力に変えて前を向き、最近、夢ができた。「新聞記者かカメラマンになりたいな。かっこいいから」

新聞に夢中「夢は記者」 

 平日の午前中。夢貴さんは力いっぱい車いすをこぎ、校内の図書館に向かう。手にするのは本でも漫画でもなく新聞。地元で圧倒的シェアを誇る八重山毎日新聞だけでなく琉球新報にも目を通す。「石垣だけじゃなく、県全体のことも知りたいから」

 きっかけは3年前。新型コロナウイルスが猛威をふるっていた。「情報を得よう」と新聞を読み始めた。1面、政治行政面、社会面。それぞれのページの中で「一番好き」なのは運動面。プロ野球が特に好き。阪神タイガースのファンだ。

石垣市社会福祉協議会のこいのぼり掲揚式で、司会を務めた竹西夢貴さん=4月21日、石垣市健康福祉センター

 野球の記事を読むとわくわくする。だが、その思いとは裏腹に「病気じゃなかったらプロ野球選手になれたかも」と唇をかんだ日もある。休み時間に外に駆け出し遊ぶ友達を見て「自分も歩けたらな」と悔しさが募ることもある。

 あれができたら、これができたら。歯がゆい思いを重ねてきた。それでも「自分のできること」「得意なこと」で力を発揮してきた。野球のプレーは難しいけど選手を応援する。こいのぼり掲揚式では得意の司会で場を盛り上げる。「できることを積極的にやる」と決めている。

こいのぼり掲揚式で「得意」の司会を務め、「自分的にはうまくできた」とにこっと笑う竹西夢貴さん=4月21日、石垣市健康福祉センター

 前向きになれるのは母美貴さん(36)の「なんでもいいから諦めないで、挑戦しなさい」という言葉があるから。心の支えになっている。「産んでくれてありがとう。お母さんには感謝してもしきれない」

 将来が不安になる時もある。それでもいつか「自分が撮る側、取材する側になって、子どもたちを元気付けたい」。「野球選手も取材してみたい」と夢を描く。

 夢貴の名は母が「夢を持って前向きに」との思いと、美貴の貴を合わせて名付けた。

 周囲に「病気で小さくてもできるんだぞ、と見せたい」。これからも夢に向かいできることを磨いて生きていく。

(照屋大哲)