HIV治療とチーム医療 陽性者の気持ちも支援<じぶんごとで考えよう HIV/エイズ>8


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 1985年、厚生省(現在の厚生労働省)が日本人として初めてHIV感染した方がいると発表しました。2022年8月時点では、HIV感染者は2万3506人、エイズ発症者は1万415人が報告されています。この連載で紹介してきたように、HIVに感染しても抗HIV薬を毎日、定時内服をすることでウイルスコントロールを図ることができ、エイズ発症予防や他者への感染予防にも繋(つな)がります。

 そのためには、HIV陽性者(PLWHA=People Living with HIV/AIDS)自身が病気とうまく付き合うことも重要です。HIV診療を行う病院ではPLWHAご自身が、治療にしっかり向き合い、内服が継続できるよう、医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、心理職などの多職種で医療チームを組み、サポートしています。

 沖縄県でHIV診療を行っている沖縄県指定のエイズ治療拠点病院(琉球大学病院、沖縄県立中部病院、沖縄県立南部医療センター・こども医療センター)のみならず、県内でPLWHAを診療している県立病院、そして全国のエイズ治療拠点病院でもチーム医療を行っています。

 医師は、診察・処方、検査などを行いますが、看護師は、治療と生活の両立ができるよう病気や治療の正しい知識を説明し、PLWHA自身の体調・内服管理方法、パートナーや自身の二次感染予防について、医師とともに説明をします。

 継続が重要となる抗HIV薬の副作用や継続への工夫点の説明は薬剤師が介入します。月に約7万円(健康保険3割の場合)かかる医療費によって経済的・生活へ負担が生じる際には社会制度申請のサポートなど、ソーシャルワーカーが支援します。

 PLWHAということで、病気の判明時から偏見や差別を受けるかもしれないという不安を抱えている方も多いです。自分自身の気持ちの整理、また他者とどのように関係性を維持するかといったサポートのために心理職も介入することがあります。

 医療機関では多職種によるチーム医療は定着してきていますが、地域でも長期療養生活ができるように、地域にいる訪問看護やNGOらのサポートも充実してきています。

 PLWHA自身も、病気を抱えていても社会で当たり前に生活ができること、そして「自分自身の目標を持ち、それを達成するために健康管理をする」「内服継続が自分への義務」ではなく、「未来の自分と会うための権利」としてその気持ちが継続できるように、多職種のチームとして、今後も私たちがサポートしていきたいと思います。

(宮城京子、琉球大学病院HIVコーディネーターナース)