相手が1人だと感染しない? 予防しなければ可能性あり <じぶんごとで考えよう HIV/エイズ>10


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 2022年12月、「HIVや性感染症は、不特定多数の人と性行為をする人の病気なのに、あちらこちらで啓発をするのはやめてください。私には関係ないのに視界に入り不愉快です。子どもにも悪影響です」と電話を頂きました。

 果たして、電話口の方がおっしゃるように、HIVや性感染症は不特定多数と性行為をする人に限った病気であり、自分は関係ないと本当に言えるでしょうか。

 HIVの主な感染経路は、血液を介した感染、母子感染、性的接触による感染とされ、現在、日本では、性的接触による感染がもっとも多いとされています。だとすれば、性行為をする方にとって、関係ない病気とは言えないのではないでしょうか。確かに、不特定多数と性行為やそれに準ずる行為をするより、特定の相手との方が感染リスクは低いと言えるでしょう。しかし、それはあくまで予防行動を取っていればという事です。

 「カレシの元カノの元カレを、知っていますか?」このキャッチコピーは2006年、公共広告機構が「エイズ検査の促進」をテーマに作成したもので、テレビ・ラジオや新聞、交通広告などで流れていたものです。読者の皆さんは今、もしくは過去のパートナーについてどこまで知っていますか?

 私が何をお伝えしたいかというと、自分自身が今、パートナーが「1人」でも、そのパートナーが過去に付き合っていた人の中にHIVやその他性感染症に感染した人がおり、未治療の場合には、現在のパートナーとの性行為やそれに準ずる行為の際、予防行動を取っていなければ、感染の可能性があるということです。

 ウイルスは人を選びません。HIVその他性感染症は、必ずしも不特定多数の人との性行為で感染するとは限りません。その行為に愛があっても、なくても、また、あなたはパートナーが1人であっても、パートナーが感染リスクのある行為をした時に予防行動を取らなければ、感染する可能性は十分あります。

 HIVやその他性感染症に関して、誤った知識ではなく、正しい知識を持つことは、自分、そして大切な人を守るための重要なアイテムの一つになります。そして、それらを他人事ではなく、常に「じぶんごと」として捉えていただければと思います。

(新里尚美、琉球大学病院第一内科・県感染症診療ネットワークコーディネーター)