早期発見のために 医療機関受診、検査の契機に <じぶんごとで考えよう HIV/エイズ>12


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 HIVに感染しているかどうかは、HIV検査を行わなければわかりません。そのため、数字には表れない「自分が感染していることを知らない」方もいると思われます。気づかないまま進行し、診断時にはエイズを発症している、いわゆる「いきなりエイズ」の割合が本県は全国と比較して高いことも課題の一つとなっています。

 本連載でも度々触れましたが、個人のライフプランや公衆衛生の観点からも、早い時期にHIVを発見し、適切な治療へつながることは重要です。現在、沖縄県内では早期発見の場として保健所と8カ所のクリニック検査、郵送検査などが重要な役割を担っています。それ以外に、早期発見のために重要な機会となるのが、医療機関を受診した無症候期のHIV陽性者をエイズ発症前に発見することです。

 HIV感染症の診断の契機となる代表的な症状には、帯状疱疹や性感染症、ウイルス性肝炎などがあります(表参照)。

 医療従事者の皆さまは、患者さんがこのような症状で受診した場合、臨床経過や既往歴などと合わせ、HIV検査を行う必要性について検討し、ご本人に説明、同意を得ていただければと思います。突然の提案に動揺し、ケースによっては検査に同意いただけない場合もあるかもしれません。しかし、検査を勧められたことがHIV感染リスクを「じぶんごと」として認識し、いずれ保健所やクリニックなどで自発的な検査を受けるきっかけとなるかもしれません。

 早期発見のため医療従事者の皆さまには前述の症状、所見などを意識していただければと思います。読者の皆さまにはHIV感染症やその他性感染症を「じぶんごと」として捉え、予防行動と合わせ、自身のセクシャルヘルスのためにも定期的に検査を受けていただきたいです。

 なお、医療機関の多くが懸念されている保険に関して、厚生労働省の通知では「間質性肺炎等後天性免疫不全症候群の疾病と鑑別が難しい疾病が認められる場合やHIVの感染に関連しやすい性感染症が認められる場合、既往がある場合または疑われる場合でHIV感染症を疑う場合については、HIV検査を保険点数で算定できる」とされています。HIV検査や保険算定、同意説明などに関し不明な点があれば、コーディネーターまでご連絡ください。

(新里尚美、琉球大学病院第一内科・県感染症診療ネットワークコーディネーター)