不協和音の響きから…ジャンルを超え音と踊りが融合 那覇市のテンブス館で「クロスアート」公演 那覇市テンブス館


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「クロスアート」で「白鳥の湖」を披露する(左から)ピアノの北崎幹大、コンテンポラリーダンスの平良彦太、歌三線の仲嶺良盛=4月13日、那覇市ぶんかテンブス館

 歌三線とピアノとコンテンポラリーダンスによる「クロスアート」が4月13日、那覇市ぶんかテンブス館であった。歌三線は安冨祖流絃聲会師範の仲嶺良盛、ピアノは作曲家の北崎幹大、コンテンポラリーダンスはダンサーの平良彦太。3人の若手実演家が、ジャンルを超えて幻想的な空間をつくり上げた。

 不協和音が激しく響く北崎のピアノから始まった「フェノメノン」。仲嶺のうねるような高音と、体内から何かがうごめくような平良の踊りが、3人の「化学反応」を表現した。

 北崎による「Rhapsody」は、自身の祖母の死をきっかけに作られた死生観がテーマの楽曲。長い時間をかけ、死者を追悼する概念「もがり」を、同じフレーズを繰り返し演奏することで表現した。

 クラシックバレエの名作「白鳥の湖」第2幕のオデットのバリエーションは、仲嶺が物語を琉歌で表現し、三線とピアノという異色の編成で臨んだ。平良はクラシックバレエを再解釈し、独自にアレンジした舞を披露した。

 「インプロ」では、ピアノと三線の即興演奏が空間を支配した。観客が発した音をも取り込んで演奏され、会場が一体となって不思議な空気をつくり出した。

 フィナーレの「屋嘉節」は、ピアノと三線が美しく絡むイントロが会場の空気を一瞬にして変えた。戦争の悲哀を歌にした「屋嘉節」を、愛する人を亡くした男が彼女の思い出と戯れる様子をクラシックバレエ作品「ジゼル」から解釈した平良の舞は、美しくも切なかった。愛する人が去った先を見つめる平良の表情と静かな不協和音から、悲しみが続いていることを表現した。
 (田吹遥子)