瞳景/あさとよしや 選外佳作・パロディからの解放/柳沢 進 イン・マイ・プレイス/安里和幸<琉球詩壇・5月13日>


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 宮城 隆尋

瞳景 

あさとよしや(那覇市)


 

ハローのしぐさで
グッバイいって
サンキューのような
アイムソーリー

あなたの わたしの わたしたちの  
らんはんしゃしてる ココロノキビ 
あなたの わたしの わたしたちの 
たまむしいろの ハイコンテクスト  
やまのちょうじょうにかかった もやのよう
だんだんうっすらきえてゆこうとしています

あさおきたら おもいだして 
あなたの わたしの わたしたちの
あいするひとのえがお こえ たちすがた

あなたのひとみを のぞいてみます
ひろくてあおいうみを うつしています

わたしのひとみには
 なにがうつっていますか

うららかなごごの かぜのなか
そっと みみうちして おしえてください
わたしのひとみの ひみつのけしき

ハローのしぐさで だきしめて
グッバイいって やっぱりまだ だきしめて
サンキューのような はにかみがおで
アイムソーリー それでは またいつか


西原裕美・選

寸評

声に出して読みたくなるユニークさがある。


 

選外佳作1

パロディからの解放

柳沢 進(東京都)

 

ベージュのひとたちが
YouTubeに映し出された
テレビやネットに増殖し
大型ディスプレイにも出現した
ベージュのコートを
みな着たくなったのかもしれない

ベージュのひとは一週間ほど画面の中に
存在し続け
主にニュース時間帯にかばいようのない
犯罪者としてたくさんの事故とか犯罪や
CMの隙間に挟み込まれ意識に巣くった
ベージュのひとはあるときを境に消えた
鏡と父親はパロディを増やすから罪深い

高級そうなベージュのコートを着た美女
弁当屋にあらわれて何かの儀式みたいに
ポケットへ惣菜を押し込んだその映像が
出回ったのは一週間前くらい前

いま僕の前に歩いているベージュのひとの
ポケットが何の前触れもなく膨らんでいる
核ボタン装置でない保証はどこにもない


 

選外佳作2

イン・マイ・プレイス

安里和幸(沖縄市)

 

6時半のスーパーマーケットのネオン
淡い色の夕雲
それらを剥ぎ取ってベニヤ板の壁に嵌め殺してしまいたいね
《高層ビル爆破のシークエンス》
手のひらには陰毛と
虚しさと苛立ち
降り積もる綿埃は無為を包みこみ
三原色の光で塗られた殺戮の泥濘と繋がることはない
その限りにおいて
俺の場所が侵されることはない
タブレットとサブスクと缶チューハイ
プルタブが放つ倦怠の燦めき
雨続きの3月だから
晴れ間には埠頭で風に吹かれたいね
あそこはまさに俺の場所だから
湾岸の道端に俺の四肢が転がっていたら?
気まぐれな君たちのことだから
二度見くらいはしてくれるんだろうね
お誂え向きの死へと向かう鴉が夜空を滑り
重力加速度によって新月を映す窓ガラスへと近似していく
《高層ビル崩壊のラストシーン》
いつまでたってもピクシーズの「ホエア・イズ・マイ・マインド?」が流れてこない
バットエンドでもいいからお開きにしてくれ
だが終わりは来ない、ただ時間が続くだけ(生活ではなく、人生でもない)
なぜならここは俺の場所だから