夢、AI、コロナ禍・・・ ベテランから小学生まで5組 一人芝居で鮮烈に表現


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(左)「A.utomatI.c」(脚本・演出/新井章仁)を演じる片山英紀 (右)「はぐ」(脚本・演出/大迫旭洋)を演じる犬養憲子

 「最強の一人芝居フェスティバル『INDEPENDENT:NHA(インディペンデントナハ)23』」(芝居屋いぬかい主催)が4月22、23の両日、那覇市のアトリエ銘苅ベースであった。ベテラン俳優から初挑戦の小学生までの演者と作演出家によるユニット5組が登場。コロナ禍やAI、若者の孤独など、社会問題も織り交ぜた作品を鮮烈に表現した。22日を取材した。

 「劇団ビーチロック」の片山英紀による「A.utomatI.c」で幕開け。開発者である主人公がAIの性能チェックのためAIが自動生成した台本を演じていると、AIが自我を持ち始める。片山は、開発者とAIのコミカルな掛け合いから、自我を持ち始めたAIの不気味さまでを演じ分けた。

 「芝居屋いぬかい」の犬養憲子による「はぐ」は、自分の半生の記憶をつなぎ「私の中にいる小さな私」の正体を探る作品。女子高生、小学生、失恋、沖縄への移住…さまざまなステージの「私」を巧みなせりふ回しで演じる犬養に、会場は一気に引きつけられた。

(左)「急がば回るな、つき進め」(演出/田原雅之)を演じる、脚本も手がけた知花錦 (中央)「エールを。」(脚本・演出/Fujico)を演じる七星琉花 (右)「YAKISOBA」(脚本・演出/樋口ミユ)を演じる石畑達哉

 「Theater TEN Company」の知花錦は、自らが脚本を担当した作品「急がば回るな、つき進め」を演じた。取引先への謝罪に急ぐ車内、カーナビとの会話を通して自分の夢を思い出す。八方ふさがりから一気に道が開ける様は、胸がすくような感覚があった。

 一人芝居初挑戦の七星琉花は自らの作文を元にした作品「エールを。」で、チアガールのまあやを演じた。コロナ禍、戦争、悲しい連鎖が広がる世界。「優しい笑顔が広がるように」「どうかエールが届きますように」と祈りを込めたチアダンスと演技が、暗闇を突き抜ける光となった。

 この日のフィナーレは、大阪からの招待作品「YAKISOBA」。「匿名劇壇」の石畑達哉が演じた。コロナ禍で会えないまま、いなくなってしまった遠距離恋愛中の彼女。二度と応答することはないスマホの待ち受け音と共に、脳内を一気に「スクロール」するように矢継ぎ早に続くセリフが、若者の孤独や不安を鮮烈に表現した。

(田吹遥子)