「個」の経験 自立の機会に 「対等関係」問いながら 大城尚子(北京工業大講師)<女性たち発・うちなー語らな>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
大城尚子

 5月に入り、北京も緑が増え初夏が来ている。ゴールデンウイーク並みの大型連休だった労働節の4月29日から5月3日、約2億5000万人が旅行したという。紫禁城や天壇など、中国人にも人気の観光地がある北京も人であふれかえっていた。

 少し前の話になるが、4月5日の清明祭に合わせて、こちらの沖縄研究者たちと一緒に北京市通州区にある琉球人墓へ墓参りに行った(地図アプリで検索可)。敷地には墓らしきものはないが、「琉球人墓跡」と書かれた看板と説明文が立てられている。そこには救国運動を展開した琉球人を含む14人が眠っている(清国に留学した琉球人や救国運動の詳細は上里賢一琉球大名誉教授や後田多敦神奈川大教授らの論文や書籍を参照)。この場所が特定できたのは中国の研究者たちの尽力によるものだと沖縄の研究者から聞いた。

 異国で数年暮らした彼らはどのように母国を見ていたのか、そして現在の沖縄をどう見ているのか、と墓参りをしながら考えた。

 北京では学びと感動が多い。AI搭載の無人小型車が学内を走っていたり、講義でアプリを活用したり、シェア自転車を利用したりなど、新鮮なことばかりだ。

 一方で、同じような感覚や土地の記憶、志を持つ沖縄人との議論は減ってしまった。

 沖縄が米国統治下に入ることが決まった4月28日や日本「復帰」の5月15日などを考えるイベントもない。日米の軍拡によって土地や自然など生活の場を捕食される沖縄を遠くから見ると、もどかしくなる。もしかしたら、救国運動を展開していた人々も同じ気持ちだったのではないだろうか。

 私は沖縄人と大和人の対等な関係の樹立をこれまで考えてきた。それぞれが精神的・思考的自立をしていなければ、その関係は成立しない。おそらく「孤独」を経験することで個々が「自立」するのだろう。

 5月2日と3日、友人の中村之菊さんとチョウ類研究者の宮城秋乃さんのオンライン配信を見た。ユーモアを交えながら米軍北部訓練場返還地の米軍廃棄物や宮城さんの裁判の話をしていた。彼女たちは、おのおのが自立した「個」の活動を行い、共依存にならない関係を維持・構築している。

 「孤独」の空間と時間を大事にし、楽しんでいるからこそ、なれ合いのない関係が維持できているのだろうと思った。

 ここ北京では「対等な関係とは何か」を問いにし、物理的に一人で思考できる機会にユーモアのある思想を実践的取り組みの中で鍛え上げ、答えを考えたい。 (第1~4日曜掲載)