沖電上げ幅、全国最大 大手7社、家庭向け電気料金の値上げ 今後は政府の負担軽減策が焦点に


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 大手電力7社の家庭向け電気料金の値上げが曲折の末に決着した。標準的な家庭の電気料金の値上げ幅は、沖縄が2771円で最も大きい。物価高対策に躍起の岸田政権の意向に加え、電力業界に厳しい立場を取る河野太郎消費者担当相が不祥事批判を強め、上げ幅は圧縮された。それでも家計への打撃は大きく、9月使用分までとなっている政府の負担軽減策の扱いが焦点となる。

異例

 「前例にとらわれず、極めて厳格な査定を行った」。西村康稔経済産業相は16日の記者会見で、値上げ幅を当初の申請から圧縮した成果をアピールした。

 今回の値上げ審査は異例の展開をたどった。2月には、物価高の中で電気料金に敏感な世論を意識した岸田文雄首相が厳格審査を西村氏に指示。各社は政府要請を踏まえて再計算し、6社が値上げ幅の圧縮を表明したが、一段の圧縮を求められて審査は長期化した。

 さらに審査の過程で大手電力の前に立ちふさがったのが、値上げについて経産省と協議する消費者庁を所管する河野氏だった。規制改革論者で知られる河野氏は、電力販売を巡るカルテルや、新電力の顧客情報の不正閲覧など市場競争をゆがめる大手電力の体質に「公正な競争が行われているか疑念が生じている」と批判を強めた。

 経産省が認可後も各社の経営を継続してチェックする妥協案を提示したことで矛を収めたが、16日の会見でも「電力会社は高コスト体質だ。是正していく」と今後もにらみを利かせる姿勢を強調した。

 燃料高騰で大幅赤字を計上する中、値上げ審査で防戦に追われた大手電力側は「再計算に相当な労力がかかった」(幹部)と恨み節。別の大手幹部は「不祥事の話とは切り分けてほしかったが、消費者の立場から考えれば仕方なかったかも」と諦め顔だった。16日に記者会見した中国電力の担当者は「負担を抑えるため最低限の上げ幅で申請していたが厳しい査定内容になった」と話した。

死活問題

 当初の申請幅から圧縮されたとはいえ、電気料金の大幅上昇は、生活必需品の値上げラッシュに苦しむ家計にさらなる打撃となる。審査過程で経産省が開いた公聴会では「電気料金まで大幅にアップすれば生活が破壊される」「値上げは死活問題」など厳しい声が相次いだ。

 大手の値上げは、規制料金を参考にプランを決めている新電力にも波及する可能性が高い。大手より安い料金を売りに顧客を獲得してきた新電力は燃料高騰による「逆ざや」に苦しみ、帝国データバンクによると3月時点で約3割が事業の継続を断念するなど苦境に陥っている。ある新電力関係者は「大手の値上げを待ちかねていた。ようやく『健全』な競争環境になる」と語った。

思惑

 政府は電気料金値上げに先立ち、1月使用分から標準的な世帯で月2800円程度の負担を軽減。補助を半減する9月分を含めて2兆5千億円程度の予算を用意している。10月分以降も続ければ「出口」を見いだせないまま財政負担が際限なく膨らむ恐れがある一方、打ち切りなら消費者の負担が急激に膨らみ、反発は避けられない。

 ガソリン価格の抑制策では、補助金の縮小が見送られた経緯があり、経産省の幹部は「電気料金の負担軽減策も、政治の思惑と世論動向に左右されるだろう」と語った。
(共同通信)