客席を埋め尽くしたアンマーもハーメーも泣き笑い うちなー芝居「母の日」4公演 各地で盛況


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 母の日の14日、恒例のうちなー芝居公演が県内各地であった。コロナ禍を経て4年ぶりとなる劇団も多く、会場は公演を待ち望んでいたアンマーやハーメーたちが席を埋め尽くした。俳優たちの演技に大笑いしたり、涙を流したりして、すっかり芝居の世界に引き込まれていた。4公演を紹介する。


 

マチャー(中央・新垣勝夫)を捕まえて葛藤する太郎(左・川武由明)と三郎(右・与座朝奎)=14日、那覇文化芸術劇場なはーと

 

劇団与座 なはーと(那覇市) 「晴れ姿三人旅」情け、葛藤

 劇団与座の「母の日に贈る特別公演」が那覇文化芸術劇場なはーとであった。異色時代劇「晴れ姿三人旅」や、歌劇「中城情話」のほか、踊り満載のステージに会場は大いに盛り上がった。

 「晴れ姿三人旅」(我如古弥栄作、新垣勝夫演出)は、友だち3人の物語。お金を稼いで豊かに暮らすことを望んだマチャーと太郎に対し、三郎は「人の役に立ちたい」と夢を語る。大人になり、三郎が「人のために」と捕まえた泥棒が友人のマチャーだった。

 元座長で「与座兄弟」の与座朝惟のおはこだった三郎役は、息子で今回新座長に就任した朝奎が演じた。三郎のひょうきんさと実直さを好演し、観客の笑いと涙を誘った。

 恋の三角関係を描いた「中城情話」(親泊興照作、与座喜美子演出)では、平田晴香が透明感のある演技で、心変わりをしたウサ小をしっとりと演じた。

(田吹遥子)


 

真鶴(右・知花小百合)への思いを抑えきれず、手を握ってしまうマチャー(東照子)=14日、沖縄市民小劇場あしびなー

 

劇団うびらじ あしびなー(沖縄市) 「てんさぐぬ花」 男の一生

 劇団うびらじ(東照子代表)は、沖縄市民小劇場あしびなーで真喜志康忠の名作「てんさぐぬ花」(松門正秀演出、東演技指導)を上演した。不器用だが、いちずな男マチャーを東が好演した。

 けんかっ早いが情に厚いマチャーは士族の真鶴(知花小百合)に一目ぼれ。夫に先立たれ苦労する真鶴とその息子亀寿(玉城愛珠(あず)、根神千代美)の世話を焼く。真鶴もマチャーに好意を抱くが、世間体や身分の違いに阻まれる。生きる気力を失ったマチャーは、自分を慕い続けるナビー(又吉優美)の優しさに気付き、2人は結ばれる。

 人の内面が細やかに描かれ、芝居を深く研究していた康忠らしい作品。東は生き生きとした青年時代、落ち着きのある壮年期、希望を失う終盤と、一人の男の一生を声色や姿勢などを変え演じ分けた。

 切ない旋律の「道の島節」が要所で繰り返し用いられた。地謡の徳原清文、恩納裕の渋い歌声が物語の味わいを深めた。

(伊佐尚記)


 

チルー(左・伊良波さゆき)と駆け落ちする我謝(右・金城真次)=14日、那覇市のパレット市民劇場

 

沖縄芝居研究会 パレット(那覇市) 「思案橋」 心の動き巧みに

 沖縄芝居研究会(伊良波さゆき代表)は、那覇市のパレット市民劇場で時代人情歌劇「思案橋」など3本の演劇を上演した。

 「思案橋」は伊良波尹吉作。我謝(金城真次)は遊女のチルー(伊良波さゆき)と恋に落ち、妻の真加戸(知念亜希)や息子の亀寿(廣山ひさき)を捨てて駆け落ちする。5年後、チルーと別れた我謝は真加戸や亀寿と思いがけない再会を果たす。

 恋に夢中だった我謝が、終盤では自らの愚かさにさいなまれていく様子を金城が巧みに演じた。我謝の父役の東江裕吉が、命を絶った我謝を抱き抱え思いを吐露する場面が涙を誘った。中盤には、タンメー役で平良進と宇座仁一が登場。2人の軽快な芝居に会場はひときわ盛り上がった。

 「美人の妻 情の妻」(真境名由康作)では、メーヌー役の伊波留依の表情がころころと変わる演技が楽しかった。同作品と「仲直り三良小」(伊良波尹吉作)は観客を笑いの渦に包んだ。
 (田吹遥子)

(田吹遥子)


 

「中城情話」より、里之子(比嘉いずみ・中央)とウサ小(平良芽美・右)、ウサ小の婚約者タラー(新垣麻里子)=14日、うるま市民芸術劇場燈ホール

 

劇団うない 燈ホール(うるま市) 「中城情話」 一途な恋に涙

 女性だけの役者で構成された「劇団うない」(中曽根律子代表)は、うるま市民芸術劇場燈ホールで時代人情歌劇「中城情話」(親泊興照作)と喜歌劇「貞女小」(島袋光裕作、中曽根演出)を上演した。中曽根代表が体調不良で出演を見合わせたため、配役を変更して上演した。昼夜2公演あり、夜公演を取材した。

 「中城情話」は、容易に結ばれない士族と農民の悲恋を描いた作品。里之子(比嘉いずみ)への思いを貫く、村一番の美女ウサ小(平良芽美)の姿が、観客の涙を誘った。ほか出演は新垣麻里子、比嘉一惠ら。

 喜歌劇「貞女小」は、帰路で口説いた美女が、妻だったと気付きあわてる男と下男の姿に笑いが起きた。

 中舞踊では、乙姫劇団より踊り継いできた「通い舟」を踊り、客席を沸かせた。最後は四つ竹の音が軽快に響く「スンガー節」でにぎやかに締めくくった。

(藤村謙吾)