【記者解説】基本条例の条文削除、司法判断せず 住民投票の根拠 石垣陸自、当事者訴訟


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住民投票実施を求める市民の署名を市選挙管理管理委員会に提出する渡久山修さん(右から2人目)=2018年12月4日、石垣市役所

 石垣市の陸上自衛隊配備計画賛否を問う住民投票の地位確認当事者訴訟で、那覇地裁判決は住民側の訴えを却下し、門前払いにした。住民投票実施を規定する市自治基本条例の条文削除を受け、司法判断がされなかった。住民側は当時、条例に基づき正当な手続きで住民投票を求めた。その根拠がないとして一蹴する判決は、民主的に訴える手段を住民側から取り上げている様にも見えかねない。

 住民側は、市長が住民投票を実施する義務を負う要件となる有権者の4分の1以上を超え、約3分の1以上の署名を集めて住民投票を求めた。実際に住民投票が実施されることはなく、住民側は裁判所に権利救済を求めた。だが住民側の「最後の手段」(弁護団)の訴えは、以前に提起した住民投票の義務付け訴訟に続いて退けられている。

 弁護団によると、条例の規定がその後の市議会の賛成多数で削除されたことについて、裁判を通して議論されてこなかったという。判決文はこの点の言及はなかった。弁護団は「住民投票条項の削除が遡及(そきゅう)的に適用されることを前提とし、根本的に法解釈を誤っている」と指摘する。

 市議会も民主的な手続きで選ばれた議員により、賛成多数で削除という判断に至った。そこに瑕疵(かし)はないが、住民投票実施を求める1万4263筆の署名をないがしろにすることはできない。控訴審を含めた今後の司法判断は、住民側の声を吟味する姿勢も問われる。
 (金良孝矢)