沖縄県の新たな種雄牛に「百合安清」 過去最高の枝肉成績、口溶けの値も高く 県産和牛のブランド力強化図る


この記事を書いた人 琉球新報社
歴代最高成績を収め県有種雄牛に選抜された百合安清=2日、今帰仁村の県畜産研究センター

 沖縄県はこのほど、新たな県有種雄牛に今帰仁村の県畜産研究センターで飼育している「百合安清(ゆりやすきよ)」を選抜した。種雄牛の能力を測る検定で歴代最高となる枝肉成績を収め、近年重視されている、口溶けの良さなどに影響する「MUFA(ムーファ、一価不飽和脂肪酸)」と呼ばれる値も高かった。県は凍結精液を県内農家に販売し、県産肉用牛のブランド向上や生産振興につなげたい考え。

 百合安清の父は、全国の畜産関係者から注目される鳥取県の種雄牛「百合白清(ゆりしらきよ)2」。畜産研究センターが2016年、沖縄県内の種雄牛として最高傑作と評された「北福波」などの精液と交換で百合白清2の精液を仕入れ、17年11月に百合安清が誕生した。母牛きよかの父は「安福久」、きよかの母の父は「平茂勝」。

 種雄牛の能力を検査する検定は、発育段階でえさの量や体重の増加量を調べる「直接検定」と、生ませた子牛から枝肉を評価する「現場後代検定」がある。百合安清の現場後代検定では、合計15頭平均で、脂肪交雑基準(BMSナンバー)やロース芯面積、枝肉重量、歩留まり率といった項目で歴代最高の枝肉成績となった。

 加えて、脂肪の質に関するMUFAの含有率も平均60.7%と、県内平均58.8%を上回った。MUFAはオレイン酸などに代表され、脂肪に含まれる割合が高いと口溶けや風味が良くなるとされる。

 質量兼備の種雄牛が新たに誕生し、県は高品質な子牛生産やブランド力強化に期待を高める。県内の競り市場での子牛の価格は低調な状況が続くが、畜産研究センター育種改良班の光部柳子主任研究員は「県の種雄牛のシェアを伸ばしながら、農家への還元につなげたい」と見据えた。
 (當山幸都)