不戦訴え「アンガマ」 戦後70年、朗読劇で体験再現


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 【石垣】多くの住民が犠牲となった戦争マラリアの悲劇や戦争の残酷さを語り継ごうと、沖縄戦後70年記念朗読劇「アンガマ異聞~石垣島のいくさ世」(八重山戦争マラリアを語り継ぐ会主催)が5日、石垣市民会館で催された。八重山伝統行事「アンガマ」による珍問答を交えながら出演者が体験者の証言などを朗読し戦争の悲惨さを訴えた。

 アンガマは旧盆中にグソー(あの世)からの使者とされるウシュマイ(翁)とンミー(媼)がファーマー(子孫)を連れて各家庭を訪問し、祖先を供養する伝統行事。朗読劇は体験者の声だけでなく、亡くなった祖先たちの声も借りて悲惨な戦争を伝え恒久平和を誓おうと、戦後70年の節目に新たに制作された。
 劇は八重山に軍が配備された様子や空襲の状況、軍命でマラリアの有病地である山間部への避難を強いられ、家族がマラリアにかかり死亡者が続出した当時のつらさを伝える内容の構成。子どもたちを含む約50人が出演し、体験者の証言を基に、戦争を再現するように朗読した。
 劇の合間にアンガマの一行が登場し、ウシュマイとンミーが「あの世に行くには現世のことを忘れないといけない」と珍回答で前置きした上で、マラリアで悲しい思いをした「70年前のことは忘れられない」と戦争で受けた苦痛を訴えた。
 別の場面でも「戦争はむごい。忘れてはいけない」などと述べ、絶妙な掛け合いで観客の笑いを誘いながらも、二度と戦争はしてはいけないという思いを伝えた。

朗読劇「アンガマ異聞~石垣島のいくさ世」。体験者の証言を基に、悲惨な戦争を再現する出演者=5日、石垣市民会館
アンガマも登場、戦争を「忘れてはいけない」という思いを伝えた