自然壕「シーガーアブ」、文化財保護法に基づく手続きが必要 糸満・鉱山開発で県教委が判断 業者は文化財発掘の届け出を提出 


この記事を書いた人 琉球新報社
糸満市米須の自然壕「シーガーアブ」の開口部(喜瀨守昭撮影)

 【糸満】沖縄県糸満市米須の鉱山開発で、琉球石灰岩を搬出入するための仮設道路に隣接する自然壕「シーガーアブ」について、糸満市教育委員会が「埋蔵文化財発掘の届け出」の提出を、開発業者の沖縄土石工業(永山盛也代表)に求め、同社が24日に届け出を提出したことが分かった。シーガーアブは二つの開口部があり、両開口部の間に搬出入道路を通す計画となっている。

 鉱山開発については県農政経済課が3月30日以降、同社が提出した搬出入道路整備に伴う農地の一時転用申請の審査を進めている。今回の届け出を受けて県教委が今後、記録保存の措置を含む調査の必要性などを検討する。県教委の判断次第では、開発はさらに遅れる可能性がある。

 シーガーアブは古くから風葬墓として地域に利用され、沖縄戦では日本兵や住民が利用したとの記録も残る。県文化財課は2000年に発行した県戦争遺跡詳細分布調査でシーガーアブを掲載しており、文化財保護法に沿った扱いが望ましいとする。

 一方、糸満市教委はこれまで、シーガーアブは開発区域外にあり、業者が崩落防止措置を取ることも確認していることから、届け出は「不要」との認識を示していた。

 県教委によると市教委と共に4月19日、現況確認を行い、「道路工事は遺跡の範囲に重なり、影響を及ぼしそう」だと確認した。これを受けて市教委に、文化財保護法に基づく届け出の必要性を伝え、5月22日、市教委が同社に、工事着手60日前を期限とする提出を依頼。同社が24日に市教委に届け出を提出し、同日中に県教委に届けられた。

 沖縄土石工業の永山代表は、琉球新報の取材に「これまで通り、法律にのっとって計画を進めていく」と話した。

 戦跡考古学が専門の當眞嗣一さんは「戦争遺跡を文化財とみなさない都道府県もある中、文化財として捉えた対応は良いことだ。埋蔵文化財に影響を与えないよう県と市がしっかり対応してほしい」と述べた。 (岩切美穂)