「はいたいコラム」 宝島はどこにある!?


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 島んちゅのみなさん、はいたい~!島は島でも今回は、瀬戸内海に浮かぶ淡路島を訪ねました。日本全国には20万カ所のため池がありますが、なんと淡路島にはその10分の1を超える2万3千のため池が集中しているのです。

 兵庫県の中でも農業の盛んな淡路島。一つの田んぼで米、レタス、タマネギの三毛作が営まれ、一年中生産し続けている働き者の島です。温暖で雨の少ない気候から農業用水としてため池が築かれ、1700年前の古墳時代からため池で水田が営まれてきました。
 どのため池も高齢化で維持管理が難しい中、里海交流保全という取り組みが広まっています。農業者と漁業者の連携による「かいぼり(池干し)作業」で、池にたまった腐葉土を定期的に掃除して海に流すことで、養殖海苔(のり)の色がよくなるなど、海の生態系の再生につながっているのです。
 日本のごはんの代名詞でもあるお米と海苔のおにぎりは、まさにこうした農業と漁業の協力の賜物(たまもの)なんですね。
 また10万トンの水量を誇る「黒田池」では去年、台風襲来の前に池の水を全て落とし、下流の浸水被害を防ぎました。台風被害を受けやすい島で、ため池という農業システムが治水や地域の減災に貢献しているのでした。
 さて、台風は島の農業に被害だけをもたらすのでしょうか。こんな話を聞きました。甘くて質のよいタマネギ産地として知られる「五斗長(ごっさ)営農」では、2004年の台風により壊滅的被害を受けたため、ほ場整備したところ、なんと弥生時代の遺跡(五斗長垣内遺跡)が見つかったのです。鍛冶屋の工房や竪穴住居23棟が発掘され、「この地域が昔から栄えていたことを古代の人が教えてくれた」と、遺跡を公園として整備し、古代米の栽培やランチ営業もはじめました。災いと幸いは紙一重なんですね。
 1995年の阪神淡路大震災。度重なる台風被害。しかし淡路島の人々はため池を工夫し、思わぬ遺跡も宝ととらえ、自然とうまく付き合う知恵と技に溢(あふ)れていました。どんな自然現象も、害にもなれば恵みになることを島の人たちは知っているのです。そうです。淡路島も沖縄も島ならば、日本だって列島です。宝の島は遠い海の向こうにあるのではありません。あなたのいる島が宝島なのです。
(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)
(第1、3日曜掲載)
・・・・・・・・・・・・・・・・
 小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ。介護・福祉、食、農業をテーマにした番組司会、講演などで活躍中。野菜を作る「ベジアナ」として、農ある暮らしの豊かさを提唱、全国の農村を回る。