2000万円超の価値失うのになぜ挑戦 石川酒造場が古酒を「再蒸留」し新商品へ 国内初の製法 沖縄


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国内初となる製法で再蒸留した古酒をブレンドするスタッフら=5月26日、西原町の石川酒造場

 石川酒造場(西原町、平良昭社長)がこのほど、泡盛の古酒を再蒸留してブレンドし、新たな商品に生まれ変わらせる製法を開発した。一つの古酒の蒸留液を出てきた順に15分画し、それぞれの味や香りを吟味しブレンドして2種類の新商品を製造する国内初の製法。南島酒販(西原町、大岩健太郎社長)との共同企画でこの製法を利用した新商品を今年秋に発売する予定。

 古酒は高付加価値で売ることができるため、あえて再蒸留するという発想自体が泡盛業界・日本の焼酎業界全体でこれまでなかったという。

 石川酒造場が5月26日に製造法を公開した。26年古酒300リットルを、15リットルずつ15分間隔に分けて再蒸留し、蒸留液を20~40%程度ブレンドさせる。元の古酒によって生み出される古酒の味わいを生かした、2種の泡盛を新たに生み出す。商品化に向け、今後数カ月かけて150パターン以上のブレンドを試すという。

 蒸溜元の26年古酒は、石川酒造場が実験的に蒸溜時間を長くとった泡盛を使用する。蒸溜時間が長くなると、取得する液体が多くなり、比例してさまざまなな成分が多く含まれることになるという。成分の多さは泡盛の強い個性を生み出すため欠かせない要素で、再蒸溜した上で分割し、ブレンドすることで古酒の芳醇な香りとまろやかな味わいを残した新しい泡盛を作り出す。

 古酒は貯蔵コストがかかり、販売する際も30年古酒だと小売価格5万円(720ミリリットル)ほどで流通している。石川酒造場は「300リットルの古酒を再蒸留することは市場価値にして2千万円以上を失うリスクがあるが、これまでありえなかったことに挑戦し、新たな商品作りに取り組みたい」としている。

 再蒸留した古酒と泡盛のブレンドは、国税庁主催による「泡盛ブレンダー・オブ・ザ・イヤー」を2020年に受賞した同社研究開発室の石川由美子室長が手掛ける。石川室長は「古酒の再蒸留は貯蔵にコストがかかることからリスクがあるとされてきた。新たな試みでどんな味が実現するか楽しみだ」と意欲を見せた。

 また、従来は廃棄対象だった、蒸留時に全体の5~10%程度出る残留液の再利用の可能性も探る。石川室長は「再蒸留した15種は全て味が異なり、それぞれに価値がある。成分の研究で用途を見いだせるかもしれない」と語った。

 南島酒販システム統括部の古謝雄基さんらは「国内初の製法による、革命的な商品となるだろう。泡盛業界に新しい風を吹き込むのでは」と話した。
 (普天間伊織)