桶谷HC流「ポジションレス」が成熟 V争いのピースに <キングスBリーグ初制覇・最強の証明>3


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CS決勝のMVPに選ばれたキングスのコー・フリッピン(左)=5月28日、横浜市の横浜アリーナ(小川昌宏撮影)

 2021―22年シーズンを西地区5連覇、Bリーグチャンピオンシップ(CS)ファイナル(決勝)に初進出し、準優勝という結果を残した琉球ゴールデンキングス。悔しさは残りながらも、初の頂点を目指していたキングスは主力選手の移籍でチームづくりの再構築を余儀なくされた。

 特に実力派ポイントガードの並里成(現・群馬クレインサンダーズ)と、昨シーズンのベスト5にも入ったオールラウンダーのドウェイン・エバンス(現・広島ドラゴンフライズ)が抜けたことが大きかった。

 変幻自在のパスからアシストし、スピードのあるドライブからリングを射抜くファンタジスタとも言われる並里と、インサイドでもアウトサイドでもプレーし、アシストもできたエバンス。攻守の中心を担い、ボールを運び、ゲームを組み立てられるハンドラーの役割も果たしていた2人が移籍。そこで桶谷大HCが今季のテーマに掲げたのが「ポジションレス」だった。

 ポジションレスはNBAでは文字通り、ポイントガード、シューティングガード、スモールフォワード、パワーフォワード、センターのそれぞれ従来持っていた役割をポジションにとらわれずにプレーする戦術だ。

 しかし、桶谷HCの掲げる「ポジションレス」はボール運びをポイントガードだけに偏らずに、どの選手がハンドラーになっても優位性を保つことを理想とした。先発機会の多い岸本隆一や今村佳太だけでなく、途中出場する、けがから復帰した田代直希や牧隼利らがボールを運び、攻撃の流れをつくった。

 また、相手がゾーンディフェンスやインサイドをビッグマンで固める戦術をとった時には、アレン・ダーラムがハンドラーとなり、相手ビッグマンを外に引っ張り出して、そこからスピードやサイズのミスマッチを使って、状況を打開する場面もあった。今季からハンドラーをすることが多くなった今村は自身の得点を伸ばしながらもアシストは昨季の約2倍の213本をマーク。インサイドでの役割が多かったダーラムも、アシストも増やしながら3点弾を18本増やすなど外からの得点も目立った。

 「ポジションレス」の形が顕著に垣間見えた試合と言えば、横浜ビー・コルセアーズとのCSセミファイナル第1戦が挙げられる。キングスは第1クオーター(Q)から得点源であり、ハンドラーでもある岸本、今村をファウルトラブルでベンチに下げざるを得なかった。それでもキングスは牧、ダーラム、コー・フリッピンがボールを運びアシストを重ね、自身だけでなく、仲間の得点に貢献し続けるなど活躍が目立った。

 レギュラーシーズンのホーム最終戦となった4月30日の大阪エヴェッサ戦後にポジションレスの完成度について聞かれた桶谷HC。「完成度の上を見たらなんぼでもある」としながらも、「ボールムーブメントっていう意味ではすごく、チームとしてかなりBリーグでも完成されている。どのチームが見ても『キングスのボールムーブメント、守るの難しいよね』ってなっていると思っている。そういった意味でいいところにいると思う」と手応えを語った。

 「ポジションレス」の成熟は今季熾烈(しれつ)な優勝争いをした西地区、そしてBリーグ制覇の一つのピースになった。

(屋嘉部長将)
(敬称略、随時掲載)