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浦添市教育長が空席に 調整不足?人選の根拠がない?市長提案に議会同意が得られぬわけは<ニュースのつぼ>


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教育長人事を審議する浦添市議会=5月12日午後

 【浦添】浦添市の教育長が5月31日から空席となっている。教育長を巡っては、松本哲治市長が4月11日の市議会臨時会に前副市長の大城千栄美氏を起用する人事案を提出したが、審議未了となり、5月12日の臨時会で反対多数(賛成9、反対17)で否決された。當間正和前教育長が5月30日で満了を迎えたため6月2日現在、教育委員の銘苅健氏が教育長の職務代理者を務めている。教育長が空席となった背景について、与野党両議員からは市長の調整不足や、根拠の乏しい人選を指摘する声が上がる。

■渦巻く市長への不満

 「定足数に満たないので、本日の会議を開くことができない。以上です」

 4月11日の臨時会、比嘉克政議長が閉会を宣言した。度重なる休憩を挟み、午後3時45分に再開した臨時会だったが、再開直後に議場にいたのは自民系会派の3人、公明党会派の4人、野党議員1人の計8人。午後4時の会議終了時間になっても定足数の14人に達せず、閉会となった。

 同日夕方、浦添市のアイム・ユニバースてだこホールでは、松本市長の就任10周年を記念した「市長と語る夕べ」が開かれた。

 登壇した比嘉議長は「今日は10周年記念の集まりができるかどうかという瀬戸際まで、議会が行われていた。紛糾し、予断を許さない。そのような状況を、市長はつくらないでほしい」と訴えた。「市長をしっかりと支えたい」と結んだが「市民のために議論する。対立の中で良いものをつくっていきたい」「大きな事業が見えているが、何年たっても形になっていない」など言葉の端々に、市長への不信感をにじませた。

■野党からも疑問の声

 5月12日の議会では野党議員から、教育行政に直接関わったことがない大城氏を選考した過程を疑問視する声が上がった。

 松本市長は「行政と一体となり教育委員会も課題に取り組むべきだ」とし、「幅広い見識を持つ」と選考理由を説明した。それに対し、真栄城玄誠議員は「教育委員会は独立しており、政治に左右されることは危険だ。『行政と一体』とは、教育委員会の存在が損なわれる」と指摘。市長は「教育行政だけで解決できない問題に対し、協力関係が必要ということ。教育委員会の独立性を損なう意図はない」と強調した。

 又吉健太郎議員は「大城氏を副市長に再任する方法もあったのではないか」とし、大城氏が教育長に起用された場合、副市長に続き、特別職の退職金を複数回受ける点を問題視した。松本市長は「教育長として誰が最適か判断する中で議会の理解をもらえれば、退職金をもらうことに問題はない」と弁明した。

 いずれの答弁も議員の支持は得られず「反対票が当初予想より2票増えた(市議)」結果となった。

■新たな人事案提案へ

 市教育長の空席期間は、2013年4月20日から5月31日までの42日間が過去最長だ。2013年は市内中学校で起きた、学校職員による校納金着服問題の責任を問われ、前任の教育長を再任する人事案が議会で否決されている。

 一方、一部市議によると、新教育長は大城氏以外の人事案が提案されることで、6月定例会で決まる公算が大きいという。市の教育関係者は「教育長の存在はとても大きく、不在なのは不安を覚える。早く決まればそれが一番だ」と話した。
 (藤村謙吾)