沖縄本島北部の自然遺産、米軍影響調査を 県内環境団体 国際NGO報告書に掲載 日米に働き掛け強化


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沖縄本島北部にある世界自然遺産と米軍北部訓練場が抱える問題について掲載された国際NGO「ワールド・ヘリテージ・ウオッチ」の報告書(同団体のサイトより)

 世界遺産保全に取り組むドイツを拠点とするNGO、ワールド・ヘリテージ・ウオッチ(WHW)の2023年次報告書が3日発表され、沖縄本島北部の世界自然遺産に接する米軍北部訓練場の廃棄物対策や、やんばるの森にすむヤンバルクイナやノグチゲラなど絶滅危惧種に対する軍用機騒音の影響調査などを日米政府に求める報告が掲載された。掲載は22年に続き2度目。

 報告書は保全に問題を抱える世界各地の世界遺産の現状を伝えるとともに問題解決に向けて、環境団体がユネスコや国際自然保護連合(IUCN)などの関係国際機関に要請や提案をする際に活用される。遺産登録を決めるユネスコ世界遺産委員会を前に開かれる、NGOユネスコフォーラムの議題に上ることもあり9月のサウジアラビアでの開催時に本島北部の問題が取り上げられれば、世界自然遺産への登録後初めてとなる。

 報告をまとめたのは、オキナワ・エンバイロメンタル・ジャスティス・プロジェクト(OEJP)の吉川秀樹代表、インフォームド・パブリック・プロジェクト(IPP)の河村雅美代表、チョウ類研究者の宮城秋乃さん、辺野古・高江を守ろう!NGOネットワークの花輪伸一さん。

 「真の世界遺産へ道なかば―沖縄島北部と米軍北部訓練場」と題した報告では、吉川代表らが情報公開で入手した沖縄防衛局の22年報告書に、防衛局が北部訓練場から発見した廃棄物の中に4500個以上の空砲弾のほか実弾2発などがあったことも記されていたとし「米軍が50年以上にわたり訓練場として使用していた結果で、大量の危険な軍事廃棄物が未だに残っていることを示唆している」と指摘。これらの情報を世界遺産センターやIUCNに提供すること―などを求めている。

 吉川代表は、この報告を通して日米政府への働き掛けを強めたい考え。今後、県内では沖縄防衛局や在沖米総領事館に要請する予定。吉川代表は2月にもオンライン開催の国際NGOフォーラムでも報告したとし「各方面で議題に上げていくことが重要だ」と話した。

 WHWの年次報告書は、ウェブサイトで英語による閲覧が可能だ。
 (慶田城七瀬)