中国の習主席、琉球に初言及 党機関誌、交通の歴史「深い関係」 玉城知事の訪中意識か


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習近平氏

 中国共産党の機関紙「人民日報」が、4日付1面で習近平国家主席が「琉球」について言及したと報じた。習氏は、琉球と中国を結ぶ交流の拠点都市だった福州市のある福建省の省長を務めたことがあり、同市の琉球館や琉球人墓地などについて発言した。元琉球大准教授で武漢大日本研究センター長の林泉忠教授は「中国では玉城デニー知事の訪中に関心が高まっている。習氏の発言も、知事の訪中を意識した発言とも考えられる」と推察した。

 林教授は習氏の発言について「公の場で琉球について発言したのは初めてではないか」と説明。「中国側は、歴史的に関係が深い沖縄との友好関係を深めることで地政学の視点から新たな地域戦略を立てることを模索しているのではないか」との見方を示した。

 人民日報の記事では、習氏が1、2の両日、中国歴史研究院などを訪れたことを紹介している。明の時代に琉球に渡った冊封使のまとめた「使琉球録」を職員が取り上げ「釣魚島(尖閣諸島)が中国に帰属することを記録した書物の初期版だ」と紹介したことに対し、習氏は「福州で仕事をしていた時に、琉球館や琉球人墓地があり、琉球と深い関係があることは知っていた。また当時琉球に入国した三十六姓の人もいた」と話した。

 玉城知事は7月に、国際貿易促進協会(国貿促)の訪中団に参加する予定。林教授は「中国と沖縄の関係が歴史的にも特別というムードがある中で、職員が意識して琉球について習氏に語ってもらう機会を提供したのではないか」とみる。

 玉城知事の訪中については通信アプリ「微信(ウィーチャット)」などで話題になっているとして、林教授は「近代以前は中国ととても友好な関係だった沖縄が、日本となった後にとても苦労して悲惨な戦争経験をしたことに対する同情心が中国の民衆や知識人の中にはある」と話した。(沖田有吾)