七戸が現役引退、畳に刻んだ人生 柔道重量級を再建、功績残し


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
全日本実業団体対抗大会で現役最後の試合に臨んだ七戸龍(左)=4日、四日市市総合体育館

 日本柔道界の功労者が、静かに畳を下りた。2014、15年の世界選手権男子100キロ超級で2位に入った七戸龍(34)=九州電力=が4日の全日本実業団体対抗大会で現役引退。五輪代表こそ果たせなかったが「よくやったと自分でも思う」と胸を張った。今後は後進の育成に努める。

 那覇市出身。那覇西高―福岡大と九州で腕を磨き、193センチで筋肉質の体形から放つ足技に切れ味があった。

 日本男子重量級の低迷が長く続いた時期に台頭し、14年世界選手権決勝では最強王者のテディ・リネール(フランス)と死闘を演じての銀メダル。100キロ超級の日本勢では05年以来の表彰台だった。大内刈りで横倒しにさせた場面はポイントにならなかったものの、世界の頂点に肉薄した瞬間だった。

 16年リオデジャネイロ五輪後、日本男子の井上康生監督は「重量級をここまで引っ張ってくれたのは、紛れもなく七戸だった」と力説。原沢久喜(長府工産)の銀メダル獲得への大きな要因と位置付けてねぎらった。

 七戸は極真空手の強豪だった父、康博さんによる言葉を大事にしていた。「頭低く、目は高く、口慎んで、心広く」。謙虚さと向上心を兼ね備え、夢を胸の中に秘めよ―。空手を習った少年時代に諭され「好きな言葉だった。ずっと自分の中にある」と言う。黙々と歩んだ柔道人生は、畳にしっかりと刻み込まれている。
(共同通信)