「あわ(泡)盛」の語源? 沖縄から消えた幻の酒「粟盛」を再現へ  県産米と粟を原料に蒸留製造 忠孝酒造と南島酒販


この記事を書いた人 琉球新報社
蒸し上がった米と粟を冷ます杜氏の井上創平さん(南島酒販提供)

 忠孝酒造(豊見城市、大城勤社長)と南島酒販(西原町、大岩健太郎社長)が、かつて琉球王朝時代に製造されていたとされる〝幻の酒〟「粟盛」の再現に取り組んでいる。沖縄で生産された在来米と粟を使用して製造されていたとされる粟盛は、粟の生産量の減少と価格の高騰によって姿を消した。伝統の酒を再現した粟使用の蒸留酒の製造は戦後初の取り組みで、8月中旬に南島酒販が県内酒造所と共同で取り組む泡盛ブランド「Shimmer(シマー)」の商品として数量限定で販売する。

 忠孝酒造と南島酒販が13日、県庁で会見し、穀物の粟と米で作る蒸留酒「粟盛」の製造、販売を発表した。忠孝酒造によると、「泡盛」の語源として複数ある説の一つに、原料に粟が使用されていたことから「粟盛」が「泡盛」へと変化したというものがあり、琉球王国時代には王府から泡盛を製造する「焼酎職」に米と粟が支給された記録が残っているという。

 両社の合同プロジェクトとして、名護市の羽地産ひとめぼれと岩手県産粟を使用し、忠孝酒造が運営するテロワール泡盛専門の蒸留所「月の蒸留所」で製造する。4種類の黒麹菌をブレンドし、琉球王朝時代の「粟盛」に近づける。

琉球王朝時代の「粟盛」を再現した新商品をPRする忠孝酒造の大城勤社長(左から2人目)と同社杜氏の井上創平さん(左端)、南島酒販の大岩健太郎社長(左から3人目)、同社商品部の千葉雄大さん(右端)=13日、那覇市の沖縄県政記者クラブ

 粟の量が限られているため、やり直しがきかない。蒸し加減や蒸留時の火力の調整に神経を使いながら、丁寧な蒸留を心掛ける忠孝酒造杜氏の井上創平さんは「粟を使用した商品を作ってみたいという思いは以前から持っていた。ようやく実現できて感無量だ」と語った。

 同社の大城社長は「文献などの情報から辛口の味わいを想像していたが、思いがけず甘みがあって飲みやすい。フルーティな香りとまろやかな口当たりで、期待以上の完成度だ」と自信を見せた。

 今回販売する「Shimmer」シリーズは「#9 忠孝 保安濾過仕上」が予定価格8千円(税抜)、羽地産ひとめぼれと岩手県産粟を使用した「#10 粟盛」が予定価格1万6千円(税抜)の2種類。ともに720ミリリットルでアルコール度数は44%。販売本数は調整中。

 南島酒販は来年3月にも、南城市の仲村渠稲作会の協力を得て、沖縄在来の赤米「羽路赤穂(はねじあかふ)」を使用した粟盛も販売予定だ。
 (普天間伊織)