ソテツの収集と研究を行う高梨裕行さん(大阪府)が、昨年から鹿児島県・奄美大島を中心にソテツの集団枯損をもたらしてきた外来のカイガラムシ「アウラカスピス ヤスマツイ」(通称CAS)の被害拡大に警鐘を鳴らしている。高梨さんは、林業技師の養成などを行う日本森林技術協会が発行する「森林技術」3月号で「(沖縄でも)ソテツ自生地に被害が拡大することが懸念される」などと懸念している。
CASは1972年にタイで発見され、寄生するソテツの輸送を通じてアジアやアメリカの自生地に広まった。在来種とは異なり、ソテツの根や幹の深部にまで寄生するため地上部から外見的な被害確認が困難とされる。約20年前には台湾やグアムの自生地で壊滅的被害をもたらしてきた。
県内では3月に国頭村でソテツへの寄生が確認されたが既に防除済みとされており、現在のところ村外への拡大は確認されていない。公共施設などの緑化木保全を呼びかける県環境部環境再生課は、引き続きソテツの管理者などに害虫対策の注意喚起を行っていく方針。
高梨さんは「植物園や私有地などに限っては農薬の再選定や研究支援が必要」とし、奄美大島からのソテツ出荷についても「有効な拡大防止策の道筋が立つまでは一時停止を検討すべきだ」と主張する。今後はNPO法人での活動を通して遺伝子保護や遠隔保護を進める見通しがある。
97年にCASの新種登録に携わった高木貞夫北海道大学名誉教授は「CASの国内への侵入が示すのは、動植物の世界的商取引の再検討と法的な整備が国際的に必要になってきているということではないか」との見解を示す。フロリダなどでの農薬使用が参考になるとする一方、「長期的には農薬に依存するより害虫の天敵昆虫を利用した生物的防除を優先すべきだ」と指摘し、天敵研究に対する国の支援を求める。(西田悠)