辺野古新基地建設に向け、沖縄防衛局が100万立方メートルもの土砂の移送に向けた入札手続きを進めている。裁判などが終わり、軟弱地盤改良に伴う設計変更申請を県が承認する事態を見据え、大浦湾側の工事を迅速に進める狙いがあるとみられる。一方、防衛省の「見切り発車」(県関係者)として、過去にも同じように契約を進めた事例があった。
防衛省は、県から設計変更の承認を得られていない現段階では、当初の埋め立て申請書に基づく工事しかできず、地盤改良が必要となる大浦湾側の埋め立て工事はできないと考えている。
一方で、辺野古側の埋め立て工事は早ければ夏ごろにも終わる可能性がある。
設計変更を巡る県と国の対立が長引いて、埋め立て工事そのものはできなくても、土砂の搬入作業を継続することで、移設作業を進める意思を内外にアピールする。
だが、辺野古側の埋め立て区域を土砂の仮置き場として活用することは当初の埋め立て申請では想定されていない。県は当初の申請書に違反している可能性もあるとみて確認を進める。県が違反だと確認した場合、行政指導などのきっかけになる。
設計変更を検討する前に、防衛省は当初の申請書に基づき護岸や岸壁の造成工事を発注した。結局、軟弱地盤への対応で設計し直すことになり、20年に少なくとも6件の工事を打ち切ったが、約302億8千万円が業者に支出された。うち5件は護岸や岸壁の建設にも至らなかった。
設計変更承認が得られていないにもかかわらず、地盤改良工事の設計や大浦湾側の工事を発注したこともある。防衛省関係者は「その時にできる事を最大限進めていく」と語った。
(知念征尚、明真南斗)