夏本番、暑い日が続きますね。こんなときは小川などで水遊びをしたくなりますね。小川に行くと、グッピーやカエルなどさまざまな生きものが活動していますが、水上をすいすいと動き回るアメンボも見つかることがあります。「アメンボ」は、セミやカメムシを含むカメムシ目(半翅目)カメムシ亜目に属する昆虫のうち、「長い脚を持ち、水上生活するグループ」の総称です。スケートをしているように動きが速く、体も小さいためにその正体をじっくり見る機会は少ないと思います。今回は、アメンボの生態について紹介します。(2022年07月24日付 りゅうPON!)
長い脚でこいで進む
「アメンボ」は、生物学的には、アメンボ科のうち、主に陸水面(川や池)で生活するアメンボ亜科と、主に海水面(一部は陸水面)で生活するウミアメンボ亜科からなります。アメンボの仲間は奄美を含む琉球列島で12種、沖縄県では9種、沖縄島では6種が報告されています。
「アメンボ」の語源は、捕まえるとあめに似た甘いにおいが指に付き、細長い棒状の虫だから「あめん棒」と呼ばれるようになったという説が有力です。同じカメムシの仲間の大半は不快な臭いを放つとされているのと対照的ですね。英国ではa pond skater(池のスケーター)、米国ではa water strider(水面を大股で歩く者)と呼んでいて、いずれも水面を滑るように移動する様子から来ているようです。
長い脚ですいすい水面を移動するのがアメンボの特徴です。その長い脚には銀色の柔らかくてとても細かな毛が密生し油のようなものを出しています。これで水をはじきます。そして水の表面張力で浮くことができます。6本の脚のうち、主に前脚と後ろ脚の4本で体を支え、中脚をオールのように動かして水面を蹴って滑るように移動します。
主なえさは水面に落下してくる昆虫や死んだ魚類などの小動物です。アメンボの口は左右のあごが細長く発達し管状になっています。このとがっている口吻を突き刺してえさの体内に消化液を注入し、小動物の組織を体外消化で溶かして体液を吸収します。同じように管状に細長く発達した昆虫に、木の汁を吸うセミがいます。
成長の過程は、ほかのカメムシ類と同様に「不完全変態」です。卵からふ化した幼虫は翅がない点以外は成虫と同じ姿で、5回の脱皮後に翅のある成虫となります。翅のある有翅型の種類は飛んで移動することができますが、小型種で成虫になっても翅を持たない無翅型の種類は飛べません。同じ種でも、すむ場所によっては翅がいらないため翅がない個体もいます。写真のセスジアメンボは成虫ですが翅を持たないタイプです。食べる餌、すむ環境が体の発達に影響します。
(監修と写真提供 安座間安史・琉球大学教育学部教職センター非常勤講師)
セスジアメンボ
分類:アメンボ亜科、セスジアメンボ属
学名:Limnogonus fossarum
体長8~11ミリ、前胸背板の中央と縁の黄色い線が特徴。低地部の池や水田などで見られる。
コセアカアメンボ
分類:アメンボ亜科、ヒメアメンボ属
学名:Gerris gracilicornis
体長11~16ミリ、体は細長く赤褐色~暗褐色、触覚は体長の半分以上(前脚とほぼ同じ長さ)、後方突起は短い三角形。低山地の池、沼などに生息する。
タイワンシマアメンボ
分類:ウミアメンボ亜科、シマアメンボ属
学名:Metroris lituratus
体長6ミリほど、ずんぐりした体形と背面の独特の模様が特徴で動きが速い。山間の渓流のよどみなどに生息する。
<まめ知識>
昆虫の口は基本大あご、小あご、上唇、下唇からなっていますが、食べるえさによってさまざまな形に発達していくのです。例えばカミキリムシは植物の葉や茎、木の皮などを食べますが、大あごが発達し鋭い刃のようになっています(図)。