今回は、夏場に林道などで見かけることの多い甲虫、ハンミョウを紹介します。中でも沖縄でよく確認されるのがオキナワハンミョウ。色鮮やかな模様が特徴です。よく観察すると大きな目、あごを持ちどう猛さもあります。ハンミョウは、人の少し先を進んでは止まり、人が追いつこうとするとひょいっと前に進む行動をとることから別名「道教え」「道しるべ」とも言われます。そんな“映える”虫の生態を探ってみましょう。(2022年09月25日付 りゅうPON!)
オキナワハンミョウ
学名:Sophiodela okinawanna
分類:コウチュウ目、オサムシ科、ハンミョウ亜科
分布:沖縄島、石垣島、与那国島
体長:約18~20ミリ
目を引ひくまだら模様
ハンミョウの仲間は、日本では20種余り、うち琉球列島には13種ほどが見られます。
オキナワハンミョウは、本土に生息するナミハンミョウ(Sophiodela japonica)と形がとても似ていて、以前は亜種とされていましたが、最近、遺伝子を詳しく調べた結果、別の種とされました。
ハンミョウには光沢のない、色の地味な種類もいますが、オキナワハンミョウは体の背面に金属光沢があり、青・赤・白のまだら模様が目を引きます。このまだら模様と、すばしこく動き回る様子を猫に例え、「斑猫」と呼ばれています。昆虫の仲間でもタマムシ(玉虫)と並び称されるほどの美しい虫の種類です。このような見た目を派手にする場合、雄から雌へのアピール、あるいは外敵への威嚇の意味合いが多いのです。オキナワハンミョウは雄も雌も同じように派手な模様ですので、後者の可能性があります。
幼虫は独特の捕食行動
美しい模様の反面、顔を正面から見ると大きな目、がっしりと発達した口(牙)が目立っていかついです。実はどう猛な肉食昆虫でほかの昆虫類を餌にします。そのどう猛さから英語では“Tiger beatle(トラのような甲虫)”と呼ばれています。
成虫は林道や河原などで地表を移動するアリなどの昆虫やミミズなどの小動物を食べ、幼虫も肉食です。
本土産ナミハンミョウの幼虫の餌を食べる行動は独特です(図)。体長約2センチの幼虫は地中に縦に長い巣穴を掘ってそこにひそんでいます。幼虫の頭部(実は半分は前胸部)は平たい円盤状になっていて「穴のふた」の役割をしています。巣穴をぴたっとふさぐ様子はマンホールのようです。6対ある単眼のうち、頭部にある2対の大きな単眼で獲物を確認すると、近づいてくるのをひたすら待ちます。運良く獲物が巣穴に近づき、“射程圏”に入ると同時に体を反転させて大きな牙で獲物を捕らえます。
<まめ知識>
先ほど紹介したようにハンミョウは、本土では「道教え」「道しるべ」と呼ばれることが知られていますが、沖縄でも方言名も“道案内”するような行動から来た方言名が目立ちます。皆さんも地元の方言(呼び方)を調べてみませんか。
この行動の生物学的な意味ははっきりと分かっていません。面白い研究テーマになりそうですね。
ハンミョウの方言名の例(地域、意味)
・ミチハカヤー(名護市久志)道を測る者
・ミチジュネー(名護市安和)道を行列する者
・ミチソージサー(南城市佐敷)道を掃除する者
・ミチパーヤー(名護市羽地)道を走る者
・ミチアンネー(大宜味村根路銘)道案内する者