梅雨が明けると、いよいよ夏本番です。涼しげな海辺に出かける人もいるでしょうね。干潟では、大きなハサミを上下に動かすシオマネキ類を見ることができます。手を振る様子はまるでカチャーシーを踊っているようです。日本産のシオマネキ類は10種類あり、そのうち9種類が沖縄県を含む南西諸島や小笠原諸島で見ることができます。種類によって背甲の部分やハサミの形・色が違うのも面白いです。干潟に出掛けて観察してみませんか。
(2021年06月27日付 りゅうPON!)
大きなハサミでメスに求愛
沖縄県内の干潟やマングローブ湿地でよく見られるのはオキナワハクセンシオマネキ、ヒメシオマネキ、ベニシオマネキ、ヤエヤマシオマネキです。ほかにもシオマネキ、リュウキュウシオマネキ、ルリマダラシオマネキ、シモフリシオマネキ、ミナミヒメシオマネキなどが知られています。大きなハサミの形や色、背(甲)の色に違いがあります。季節を問わず観察することができるシオマネキ類は熱帯・亜熱帯の河口近くの海岸で巣穴を掘って生活します。巣穴を掘る所は、砂や泥混じりの干潟、マングローブ湿地や砂浜などで、ベニシオマネキは平均海水面より高い位置、ヒメシオマネキは低い位置にすむなど、種によって違います。
シオマネキ類の特徴はなんと言ってもその大きなハサミ(鋏脚)です。オスの片方のハサミが、もう片方に比べて極端に大きいのです。なぜオスの片方だけ大きいのでしょうか。ハサミの役割については(1)身を守る「武器」(2)巣穴を守る「ふた」(3)体を冷やす「放熱器官」―などが考えられていますが、「メスへのアピール器官」としての役割が最も大きいと考えられています。メスに魅力をアピールするために発達した大きなハサミですが、もちろん武器やふたとしても役に立っているのでしょう。
この大きなハサミを上下に振る動きが「ウェービング(waving)」と呼ばれる求愛行動です。この動きが「潮が早く満ちるよう招いている」ように見えるため、「シオマネキ」と名付けられました。
シオマネキ類は砂泥中のプランクトンや腐った植物(デトライタスと言います)を餌にしています。小さなハサミは砂泥をすくうのに適した構造をしています。その小さなハサミで口に運んだ砂泥中の餌をろ過して食べ、砂泥だけを「砂団子」としてはき出します。そうすることで、干潟の有機物を分解し、干潟の環境を浄化する上で重要な役割も担っているのです。
(監修・安座間安史 琉球大学教育学部・教職センター非常勤講師)
<まめ知識>
シオマネキ類のオスの大きなハサミを「利き腕」とします。観察してみると「右利き」も「左利き」もいます。ある研究者が県内のある干潟で調べてみると、ヒメシオマネキでは9割が右利きでしたが、オキナワハクセンシオマネキでは「右利き:左利き=6:4」の割合だったとの報告があります。種や地域で右利きと左利きの比率は異なるようです。自由研究で調べてみるのも面白いかもしれません。