小学校の理科の教材や、童謡「めだかの学校」でも知られているメダカ。皆さんにもおなじみの魚ですね。ひとくちに「メダカ」と言われていますが、近年の遺伝子分析による研究で、日本のメダカは「キタノメダカ」「ミナミメダカ」の2種に分けられました。さらにミナミメダカは、地域によって九つの型(東日本型、山陰型、東瀬戸内型、西瀬戸内型、北部九州型、有明型、薩摩型、大隅型、琉球型)に区別されました。沖縄のメダカはミナミメダカの「琉球型」ですが、自然界では絶滅の危機にひんしているのです。今回は、沖縄のメダカについて調べてみましょう。
(2021年07月25日付 りゅうPON!掲載)
外来種との競争で激減
沖縄には、メダカの仲間であるグッピー、タップミノー(カダヤシ)などもすんでいます。どちらも外国から持ち込まれた魚です。タップミノーは北米産で、感染症のマラリアを媒介する蚊の幼虫退治のために1919年に台湾経由で沖縄に持ち込まれました。カダヤシ(蚊絶やし)という和名の由来です。また、グッピーは、1970年ごろ鑑賞用として沖縄に入ってきて、その後定着した魚です。特にオスは色とりどりです。どちらも、誰かが池や川に放してしまったのでしょう。この2種は、餌のプランクトンや、池や小川などの生活空間が在来種のメダカと重なるので、やがて生存競争が始まりました。
メダカは卵を生んで子孫を増やします(卵生)が、タップミノーとグッピーは体内で卵を孵化させて稚魚を生みます(卵胎生)。メダカとタップミノー、グッピーが混生する地域では、メダカの卵はほかの2種に餌として食べられてしまいます。ほかの2種の稚魚たちは逃げられるので生存率が高くなり、やがてメダカの数が減ります。それ以外に、餌の奪い合いなどもあり、やがてメダカは絶えていったとみられます。
メダカ、グッピー、タップミノーは共にメダカの仲間ですからよく似ていますが、区別できるポイントがあります。尻ビレの形と位置、尾ビレの形です。メダカの尻ビレはオス、メス共に長い台形です。タップミノーとグッピーのメスはうちわ型、オスはやり型です。タップミノーとグッピーの見分け方は難しいのですが、メスの尻ビレの付け根が背ビレより前にあるのがタップミノー、尻ビレの付け根と背ビレが並んでいるのがグッピーです。グッピーは尾ビレが大きいのも特徴です。体の大きさは、メダカとグッピーが全長約4センチ、タップミノーは少し大きく約5センチです。
(監修・安座間安史 琉球大学教育学部・教職センター非常勤講師)
<まめ知識>
琉球大学の今井秀行先生たちは、県外16カ所、県内8カ所のミナミメダカの遺伝子情報を調べ、沖縄島南部のため池で、県外産ミナミメダカの品種であるヒメダカと、県内産ミナミメダカの交雑種を確認しました。つまり、県内産ミナミメダカの遺伝子かく乱が起きていることが証明されたのです。
ヒメダカは小学校で「メダカの誕生」の教材として入手しやすい品種です。増やしてあげようと自然に放流することで、県内産ミナミメダカと交雑した結果、県内産ミナミメダカ(琉球型)が絶滅するかもしれないのです。
県内産ミナミメダカを守るための三原則
(1)水草のあるメダカ本来の生息環境の保全と回復
(2)競争相手となる外来種の侵入阻止と除去
(3)沖縄県以外の他地域のメダカとの交雑防止
※メダカの型の違いは、見た目では分かりません。どこから来たかはっきりしないメダカをもし飼っていたら、決して川や池に放してはいけません。