草むらに入ると、黒くて細い植物の種がズボンや靴下などにたくさんくっついてしまったことはありませんか。この正体は、道ばたなどでよく見かける白と黄色の花が咲く「タチアワユキセンダングサ(別名:シロノセンダングサ、方言名:サシグサ)」の種子です。種子には細かいとげがたくさん生えていて、それが布などにひっかかるのです。よく広がる雑草として知られ、農作業の邪魔になることもあります。そんな「厄介者」扱いされたサシグサですが、近年、健康に有用な成分が含まれるとして注目され、食品や医薬品に使おうという動きもあります。今回は、身近な植物「サシグサ」について、その構造などについて調べてみましょう。(2021年09月26日付 りゅうPON!)
くっつく種で広く分布
沖縄各地で、季節問わず花を見ることができる「タチアワユキセンダングサ(方言名サシグサ)」。元々は熱帯アメリカ原産の植物で、何らかの理由で沖縄に運ばれ野生化した帰化植物です。県内では1965年ごろから米軍嘉手納飛行場のゲート周辺で見られるようになり、以後爆発的に県内に広がったようです。今では「日本の侵略的外来種ワースト100」の一つに指定されています。
どこにでも生えて、刈ってもすぐ伸びてくる雑草として嫌われていましたが、やがてヤギやニワトリの餌として利用されるようになりました。近年では、抗酸化作用の高いタンニンなどの有用な成分が葉に含まれることが分かり、健康食品や医薬品としての研究、開発が行われています。そのほか、ミツバチの蜜源としても注目されています。
タチアワユキセンダングサは白と黄色の花が目を引きますね。“一つの花”に見えるのは、実は「舌状花」と「管状花」と呼ばれる2種類の花がたくさん集まった「集合花」といわれるものです。白い花弁はおしべとめしべがなくなった舌状花で、花粉を運ぶ昆虫を誘う役割があると考えられています。中央の黄色い部分は管状花がたくさん集まっています。ヒマワリなどキク科の植物に特有な花の形態です。
管状花は、五つの黄色い花弁が管状にくっついたものです。花弁の下の子房には二つに分かれたとげ状の「がく片」があります(図「種子ができるまでのしくみ」の(1))。花弁が開き、中から1本のめしべと5本のおしべが現れ、ほかの株の花粉をつけたハチなど昆虫が訪れて受粉します((2)、(3))。受粉後は花弁としぼんだめしべを落とし、がく片が変化してとげの発達した「冠毛」のある種子ができます((4)、(5))。この種子は払おうとしてもなかなか落ちず、動物の毛や人の衣服にくっつき遠くに運ばれていきます。こうして広い範囲に種が運ばれ各地で増えていくのです。
(監修・写真提供 安座間安史 琉球大学教育学部・教職センター非常勤講師)
<まめ知識>
タチアワユキセンダングサの花には、多くの虫たちが訪れます。代表的なのはチョウの仲間、ハチやアブの仲間、カメムシ類、ハナムグリ類などです。多くは蜜を吸うために訪れますが、中には蜜を吸わずに離れる虫もいます。どちらの場合も、虫の体に花粉をつけることで受粉に役立っているようです。また、タチアワユキセンダングサの花をルーペや顕微鏡で見ると、管状花の中に緑色をした体長1~2ミリほどの小さな虫がよく見つかります。これはアザミウマという昆虫の仲間です。タチアワユキセンダングサとどのような関係があるかは分かりませんが、研究してみるのも面白いかもしれません。また、舌状花はたいてい5~7枚ですが、1面の写真のように9枚など数が多いものも見つかります。詳しい理由は分かりませんが、これも面白い研究材料になりそうです。