明け方の那覇、夜の馬天…101年前の沖縄を詩と音楽、舞で表現 「六甲おろし」の佐藤惣之助が見た景色とは


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
佐藤惣之助の詩「花風ふし」を朗読した宮城さつきさん(右)と「花風節」の演奏に乗せて舞う宮城茂雄(中央)=10日、那覇文化芸術劇場なはーと

 詩人・佐藤惣之助が沖縄を詠んだ詩を元にした公演「琉球諸嶋風物詩集―惣之助の詠んだ沖縄―」が10日、那覇文化芸術劇場なはーとであった。「六甲おろし」の作詞などで知られる佐藤は神奈川県川崎市出身で、1922年6月10日に沖縄の地を初めて踏んだ。公演では、詩に添えられた琉歌や節(曲)を実際に演奏しながら詩を朗読し、101年前の同じ日に佐藤が見た沖縄の景色を、言葉と音楽と舞で再現した。

 佐藤は沖縄を旅し、那覇など県内各地の風景を詠んだ「琉球諸嶋風物詩集」を刊行した。

 詩集の朗読は、フリーアナウンサーの宮城さつきさんが担当した。琉球の島々の外観を詠んだ「琉球鳥瞰圖」では、詩に添えられた「かぎやで風節」の曲に佐藤の琉歌を乗せて歌った後、詩を朗読した。明け方の那覇の港から残波岬、伊江島、夜の馬天港と、時の経過と景色の変化を悠々と感じさせた。「琉球娘仔歌」は「しょどん節」に乗せて琉歌を歌い、詩を朗読した。張りのある歌声と佐藤の写実的な詩に、琉球の女性たちのはつらつとした姿が目に浮かんだ。

佐藤惣之助(真照寺提供)

 三重城の別れを女に成り代わって佐藤が詠んだ「花風(はなふ)ふし」は、「花風節」に乗せて詩を朗読し、宮城茂雄が踊った。「ひとり手巾ふりゝ泣きに泣くよ」の詩と、曲が鳴り終わった後も手巾を振り続ける宮城の踊りが、別れの悲しさを一層引き立てた。

 公演では、佐藤が見たと記した「下り口説」を嘉数道彦が舞い、「金細工」を宇座仁一、宮城、嘉数がそれぞれの役を担いながら踊った。公演の地謡は、歌三線が仲村渠達也、徳田泰樹、箏が友寄朱里、笛が松川享平、太鼓が宮里和希。

 座談会では、佐藤の歩みや沖縄との関わりをまとめた映像を制作した喜屋武靖監督、歌人の名嘉真恵美子さん、琉球古典音楽奏者で公演を企画した仲村渠達也さん、なはーとの村上佳子さんが登壇し、佐藤の詩を解説した。仲村渠さんは「節が添えられてるのを見てぜひ演奏してみたいと思った。実現できてうれしい」と企画に至った思いを語った。
 (田吹遥子)