旅先では何が起こるか分からない。この時期、特に気を付けるべきは台風だ。帰りの便が欠航ともなれば、個人旅行の初心者は往々にしてパニックになる。
こんな人たちに基本的な対処方法を教えるのも彭さんの仕事の一つ。帰りの便やホテルの確保方法から、証明書や領収書取得の重要性まで、押さえるべきポイントは山ほどある。
ただ今の時代、旅行保険にさえ加入していれば、帰国延期で延泊になって宿泊費用がかさんだとしても、保険でカバーすれば経済的な負担はほとんどない。自分と同行者の安全さえ確保できれば、台風による延泊も悪くなかったりする。
休暇とはいえ、あわただしかったスケジュールの後に、ぽっかり空いた時間をのんびり楽しむもよし。停電になれば、懐中電灯一つ囲んで久しぶりの一家だんらんを楽しむのもいい。
こんな時だからこそ、ヒトの親切も身に染みる。ある民宿のオーナーは、レンタカーが受け取れず困っていた宿泊客を遠くの営業所まで送った。またあるオーナーは延泊することになった一家に大量の食品を差し入れた。
宿泊客とオーナーとの距離が近い分、民泊には心温まるエピソードが少なくない。宿泊客は感謝の気持ちを、台湾から持って来ていたカップ麺に日本語のメッセージを添えて、こう残している。
「おもてなしと台風食品に感謝。台湾の麺を贈りたいので、気にいっていただけるといいです」
台風一過。嵐は良い思い出も残してくれた。
(素材出典・沖縄彭大家族・彭國豪、文・渡邉ゆきこ)