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急転直下の町長「見直し求めず」 嘉手納町・米軍防錆整備格納庫 募る不信 <ニュースのつぼ>


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町議会6月定例会一般質問に臨む當山宏町長(前列左)。防錆整備格納庫建設について質問が相次いだ=14日、嘉手納町議会

 【嘉手納】米軍が嘉手納基地内にある元駐機場「パパループ」に建設を計画している防錆(ぼうせい)整備格納庫。予定地は住民居住地に近く、騒音や悪臭などが懸念されることから、嘉手納町は一貫して計画に反対してきた。ところが當山宏町長は13日、計画の見直しを求めない考えを表明。計画は「容認しない」としつつも、今後は安全な運用のため万全な措置を講じるよう日米両政府に求めると姿勢を転換した。町民や一部町議からは「事実上の容認」と批判の声が上がる。住民説明会を開く予定もなく、今後不信感が募りそうだ。

■保革超え同一歩調も

 嘉手納町の計画への反対姿勢には、町議会だけでなく県議会も歩調を合わせた。県議会では計画見直しを求める決議・意見書が全会一致で可決されるなど、基地問題としては珍しく保革を超えて広がった。

 一方で日米協議の結果、計画は強行されると決まり、防衛省と外務省は今年4月、町に伝達した。當山町長は報道陣に「容認できない」と発言し、反対の姿勢を貫いた。

 だがそれから約1カ月半が経った今月13日、當山町長は町議会の一般質問の答弁で方針転換を表明。格納庫で行われる作業が町の想定よりも小規模であることや、施設計画の安全性を政府が米側から確認したことなどを理由に、計画見直しは求めない考えを示した。

■広がる戸惑い

 「見捨てられたようだ」-。當山町長の表明を受けて、これまで計画に反対してきた町民らが16日、町役場前に集まり抗議した。福地勉さん(73)は「米側の話を額面通りに受け取らず、安全な町を子や孫に残すためにも反対の意思表示を続けてほしい」と訴えた。

 住民説明会の開催がないことにも不満の声が上がる。同町屋良に住む56歳の女性は「町長の考えに全員が一致するわけではない。まずは説明会を開いてほしい」と求めた。

 これまで要請行動を共にした嘉手納町基地対策協議会や町議会などに事前に方針転換の説明がなかったため、周囲からは疑問の声が漏れた。ある関係者は當山町長の表明を新聞報道で知り、役場に駆け付けた。「今まで何だったのだろう」。戸惑いを隠さなかった。

■注目の町議会対応

 計画見直しを求めないという大きな決断-。それだけに住民説明会や記者会見などを通して表明するべきだったと指摘する声も出た。ある町議は「議員の一般質問を利用したのではないか」と眉をひそめる。一方、當山町長は「ぎりぎりまで検討を深めていた」と理解を求めた。

 町と同一歩調を取ってきた町議会の対応も注目される。仲村渠兼栄議長は、當山町長の表明を「首長の判断」とし、一定の理解を示す。一方で基地問題には全会一致を貫いてきたという歴史のある町議会で、方向性が割れる恐れも懸念する。「議員は自身の方向性を判断しなければならない立場だ。全員協議会で町長から経緯を聞いて対応を検討したい」と述べた。

(石井恵理菜)