高校生失明、警官を「業務上過失」で起訴 きょうにも那覇地検 「故意」は認定せず、特別公務員暴行陵虐罪から容疑を切り替え


この記事を書いた人 琉球新報社
昨年1月に警官とバイクの高校生が接触した路地=29日未明、沖縄市

 沖縄市宮里の路上で2022年1月未明、バイクで走行中の男子高校生=当時(17)=が沖縄署に勤務していた男性巡査と接触し、右目を失明する重傷を負った事件で、那覇地検が巡査を業務上過失傷害の罪で在宅起訴する方針を固めたことが、関係者への取材で分かった。29日にも起訴する。県警は昨年11月、巡査を特別公務員暴行陵虐致傷容疑で書類送検していた。関係者によると、那覇地検は巡査の一連の行為と、けがとの因果関係を「極めて故意に近い過失」と判断したとみられ、故意ではなく過失を問う同罪に切り替えたという。

 業務上過失傷害罪は、業務において必要とされる注意を怠るなどした結果、けがを負わせる罪。けがとの因果関係は過失となるため、故意性が問われる特別公務員暴行陵虐致傷罪と比べ、量刑は軽い。

 これまでの県警の事実認定によると、暴走行為警戒中だった巡査は沖縄市内の路地で、職務質問を試み、対面からバイクで走行してきた高校生に右手で所持していた警棒を差し向け、左手で高校生につかみ掛かった。伸びた警棒が高校生の右目付近に当たり、大けがを負わせたとされる。DNA鑑定の結果、警棒からは高校生のDNA型が検出されたという。

 県警は関係者の供述や各種検証、専門家による科学的知見などの結果を踏まえ、事実認定に至ったとし、巡査の一連の行為は職務執行上の適正さを欠き、過失ではなく故意による暴行と認められるとして、特別公務員暴行陵虐致傷容疑で那覇地検に書類送検した。

 関係者によると、現場周辺には接触の様子を映した防犯カメラはなく、目撃証言などもない。客観的な証拠が乏しいことなどから、捜査は時間を要し困難を極めた。書類送検後も補充捜査を重ねた結果、巡査の一連の行為は過失と認められるとして、業務上過失傷害罪の適用に至ったとみられる。

 同件を巡っては、警察の対応に疑念を持った若者など数百人が沖縄署周辺に集まり、このうち投石などをした少年らが庁舎の一部を破損させたとして、暴力行為法違反(集団的器物損壊)罪で暴力団員の20代の男が起訴され、これまで少年ら計15人が摘発された。

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