「にげるは生きる」伊江島の戦争体験、映画に ガレッジ・川田さんら「復帰っ子」有志が製作 沖縄


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伊江島出身戦争体験者の証言を収めたドキュメンタリー映画「にげるは生きる」の上映会=6月18日、伊江島はにくすにホール

 【伊江】伊江島はにくすにホールで6月18日、伊江島出身戦争体験者の証言を収めたドキュメンタリー映画「にげるは生きる」の上映会が開催された。主催は結515(比嘉盛也代表理事)で、伊江島観光協会(比嘉ナエ子会長)が協賛した。

 会場には多くの村民が集まり約1時間、戦争を生き抜いた8人の証言を食い入るように見た。上映会に先立ち、製作者の1人であるガレッジセールの川田広樹さんがスクリーン越しに「忘れてしまいたいことを話してくださったおじいおばあの思いを必ず次世代に伝えます」とメッセージを伝えた。

 結515の比嘉代表理事は「たった6日間で、伊江島は2人に1人の命が奪われた。この映画は、ここ伊江島でなくては作れない。証言をした方々に共通して言えることは親が逃がしてくれた。逃げるは生きるだよ、生きるために逃げて今があるとおじい、おばあは口をそろえて話した」とした。また「教育が大事だ。世界情勢も知らない、飛行機も見たことがない、初めて飛行機を見て大きなトンボだと思ったとか、鉄砲の玉より馬が走るのが速いと思っていたなどという、当時の教育状況や知識の乏しさなども話してくれた」と語った。「この映画は300人以上の協力のおかげで製作、上映できた。その方々の思いを現代、未来に生きる人々に伝えます」と感謝した。

 観光協会の比嘉会長は「子どもの頃、父の友人が家に集まり戦争の話をよくしていた。あれから歳月が流れ、今回この映画を作ることに協力できたのをうれしく思う。未来の子どもたちにつなぐ財産にしたい」とあいさつした。名城政英村長は「この映画を素晴らしいと表現してもいいのかどうか。身につまされる証言ばかりでうまく表現する言葉が思いつかない。子どもたちにも見せて悲惨な体験をされた方々の思いをつなげたい。英語訳もして世界へ発信できるようになるといい」と話した。

伊江島出身戦争体験者の証言を収めたドキュメンタリー映画「にげるは生きる」の証言者と家族やスタッフ

 主催した結515は、「復帰っ子」と呼ばれる1972年生まれを中心とした有志が集う一般社団法人。皆で一緒に「沖縄」をテーマとしてつながる活動をする団体で、2021年5月15日に結成された。「沖縄、そして世界から貧困がなくなり、愛の溢(あふ)れる世界になるように」をコンセプトに活動している。映画は8月27日宜野湾市の沖縄コンベンションセンターで上映される。

 (知念光江通信員)