那覇に拠点を置く第15旅団の第15施設隊が2014年以降、陣地構築などを想定した琉球石灰岩の掘削訓練を実施していることが分かった。陸自関係者によると、「陣地構築は基本動作」としてあらゆる部隊で実施し、各部隊が訓練計画を定めるという。一方、福岡の第5施設団も陣地構築などを想定し琉球石灰岩の爆破訓練を実施しており、対中国を念頭に南西諸島の「有事」を想定した自衛隊の動きがこの約10年間で、着々と進められていることが改めて浮き彫りになった。
日本政府が10年の防衛大綱で方向性を示した自衛隊の「南西シフト」。中国の台頭に対し南西諸島の防衛強化を図るため、「空白地域」への部隊配置に言及した。12年に日本が尖閣諸島を国有化して以降、中国の動きも活発化している。
13年には、対中国を念頭に「南西地域の防衛体制の強化」を打ち出した防衛大綱(25大綱)を閣議決定。中国への警戒感をさらに強め、弾道ミサイル対処などの機能強化も打ち出した。
防衛省は南西諸島における部隊の「空白地域」解消を推し進め、16年に与那国島、19年に宮古島、奄美大島、今年3月に石垣島に駐屯地を開設した。
元自衛官で軍事評論家の小西誠氏は「南西シフトの背景には、もともと10年の米国の統合エアシーバトル構想がある。対中国を想定した動きを進めていた自衛隊も、米国が構想を打ち出したことでより動きが具体化した」と、沖縄と台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」で中国の進出を封じ込める戦略だと指摘する。
日本は敵基地攻撃能力(反撃能力)を備えた長射程ミサイル配備への動きを見せており、小西氏は「沖縄に『ミサイル基地』を造る動きが進み、それを踏まえた地下陣地や地下坑道、地下司令部の構築の動きではないか」と琉球石灰岩の掘削訓練について推測した。
一方、陸上幕僚監部は陣地構築の訓練実施を一律で決めている訳ではなく、各部隊が駐屯する地域の地質など特性を踏まえた訓練の一環と位置付けている。
陸自関係者は「どこでも万が一に備えておく必要がある」と話した。例えば、北海道など積雪寒冷地では雪を固めて陣地を造る訓練をしているとし「あらゆる場所で戦えるようにしておく必要があり実施している」とした。
(座波幸代、明真南斗)