グループ再編を推進し、着実に業績を伸ばしてきたりゅうせきの當銘春夫会長兼社長。6月27日の株主総会で就任したその日に来期の次期社長に根路銘剛宏副社長を指名する異例の発表を行った。思惑や今後注力する課題などを聞いた。
―新たな役員体制の狙いについて。
「会長就任に伴う社長退任を検討したが、根路銘副社長には1年後の自らの経営方針をじっくり考えてもらうため今回の体制になった。私自身、社長就任当時は、それまで管理部門しか担当しておらず、全体を把握し課題を抽出することに1年かかった。副社長以下の役員には、来年度の経営執行体制に向け事業の再構築と新たなビジネスモデルを構築してほしいと思っている」
―社長に就いて8年。特にグループ再編に力を入れてきた。
「資金繰りや人事戦略など親会社に頼る経営手法から次第に各社が独自路線戦略を取り入れるなどばらつきが出始めていた。ガバナンス(企業統治)が機能していなかった。グループの管理部門を担当してきた私の責任だと反省している。そこでグループ経営を検証し刷新することにした」
「まずグループを一つの会社『Oneりゅうせき』として事業構造改革に着手した。事業ポートフォリオを、総合エネルギー、暮らしのサポート、ビジネスサポートの3事業に集約し、商流物流や人事制度を統一化した。グループ間の人事異動や交流が進み職務経験の幅が広がった。バックオフィスの効率化、基幹システム導入、意思決定のスピード化など今後はグループ経営システムを構築し、さらなる効率化を実現したい。未来志向で動ける人材を育成していく」
―人材活用にも力を入れてきた。
「再編を契機に、形骸化していた人事制度を再構築した。入社後は各事業ラインでしかキャリアを積めなかったが、新人事制度はグループ会社や他事業など横にもチャレンジできる仕組みにした。企業業績が前年を上回ったことは社員の能力向上が一番の要因だ」
―9月に新たなCI(コーポレートアイデンティティー、企業理念)を導入する。
「バブル経済崩壊後の会社は事業存続が優先となり社員への理念の共有が行き届かない状況下にあったように思う。2050年の100年企業に向け、いま一度『社業の公共性に徹する』という、創業者精神を全社員で共有することが重要だ。その上で存在意義や新たな企業理念を、次世代を担う社員に任せたいと考えている」
(聞き手・謝花史哲)