prime

<かっちゃんを語り尽くす(下)>全身全霊で残したもの コザの街から伝えたいこと 関係5氏座談会 


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄ロックの「レジェンド」と語り継がれた「ヒゲのかっちゃん」こと川満勝弘さんが4月に死去した。川満さんの功績や生涯を振り返る座談会「かっちゃんを語り尽くす会」の(下)をお届けする。

 (上)はこちら。
 (中)はこちら。

2016年のピースフルのかっちゃん。

―かっちゃんとコザの街、沖縄ロックの歴史は切り離せない。かっちゃんが亡くなって時代の節目も感じる。何を残していきたいか。
宮永英一 一つの夢をずっと追い続けるのがいかに大事なことか。かっちゃんは毎日のステージでの闘いの中で、エネルギーを発散した。命懸けだった。夢をひたすら追いかけるのがいかに重要か、彼は残したと思う。

喜屋武幸雄 コンディション・グリーンも紫も、マリーwithメデューサも、昔のミュージシャンはみんな沖縄に戻った。今の若者たちは東京に行きたがる。

 でも僕らが東京に行って思ったのは、結局、日本の音楽業界のシステムに合わない。なぜかというとAサインで修行して、自分たちの演奏スタイルを作り上げているわけよ。ところがあの頃の東京のプロデューサーは演奏も詩も全て取り仕切ろうとした。

 沖縄のロックバンドは、沖縄じゃないと生まれなかった。そういうオリジナリティーを大切にしてほしい。
 

ピンクのコーディネートで登場したかっちゃん。2019年のピースフル。

宮永 勝手にやってくれたらいいけどさ。僕らの演奏スタイルにまで口を出すのは違うよと。自分たちのレールがある。それを外して別のレールには乗っかれない。

 「お前たちのオリジナリティを聞かせてくれ」と言われた時に何があるか。この曲をさせたら絶対に誰にも負けない、そういう気持ちでやってきた。

喜屋武 韓国のアーティストが英語のスタイルを取り入れて、全米チャートでもトップを取っているでしょ。日本だけに目を向けるのではなく、もっと高いレベルを考えた方がいい。

 沖縄の若い人ならできる。コンディショングリーンは米国ツアーもした。沖縄は日本と切り離された独特の歴史を持っている。県も基金を作って、韓国とかに負けないような、外に打って出るアーティストを育ててほしい。

最後のピースフル出演となった2022年のステージ=2022年7月9日、沖縄市のコザ・ミュージックタウン音楽広場(喜瀨守昭撮影)

神鬼 かっちゃんはボーカルだけど、一番のネックは音楽的なセンス、歌唱力だった。彼も自分自身でそれを知っているから、コンプレックスも持っていた。バンドメンバーの僕にもジェラシーを持っていた。

 だけど彼は、プロとしてやっていく上で、全身全霊で常人以上のことをパフォーマンスで表現した。肉体と精神を使って。普通じゃないわけよ、とにかく。人を喜ばす、驚かすことで自分の弱点を見事に補った。

 みんなができないことを平気でやってのける。それで自分のコンプレックスを解消した。そういうエネルギーや生き方だよね。

川満勝弘さんの思い出を語る(右から)宮永英一さん、神鬼さん、喜屋武幸雄さん、宮島真一さん、徳山義広さん=5月22日、沖縄市胡屋のコザメトロ(ジャン松元撮影)

宮島真一 かっちゃんはボーダレスな人だった。今でいう多様性の原点みたいなのを今の時代に残したのかもしれない。

 なぜ彼はこんなに思い出話の中心になるのか、不思議な魅力がある。彼がその魅力を表現できる場がコザにあったのだと思う。かっちゃんのような人物が生まれる、あるいは「生まれてしまった」街なのかと思う。その感覚を引き継いでいけば、いろんな個性がどんどん飛び出して自然に表現する人たちが生まれてくる。

 もう二度とかっちゃんは出てこないけども、そういう人が生まれやすい島になると思う。

徳山義広 ピースフルのプロデューサーを長年務めてきたが、あれほど強烈な人物はもう出てこないはずね。かっちゃんの功績、エピソードを伝えてくことは「音楽のまち」を掲げたまちづくりをしている沖縄市にとっても大切だと思う。

 例えばゲート通りにかっちゃんのキャラクターの壁画を描いたり、かっちゃんのステージの映像を流したりして、かっちゃんがライブハウスをしていた場所の前に、モニュメントとか形として残っていく何かがあるといいと思う。

 語り継がれるアーティストがいた街を発信することで、コザ全体の魅力にもなるのではないか。

(終わり)

************
座談会の登壇者は、
・喜屋武幸雄さん 県ロック協会事務局長
・宮永英一さん(愛称・チビ) 県ロック協会元会長、紫ドラム
・徳山義広さん ピースフルラブ・ロックフェスティバル総合プロデューサー、元ミュージックタウン音市場館長
・神鬼(シンキ)さん 元コンディショングリーンギター
・宮島真一さん シアタードーナツ・オキナワ代表、ちゃんぷる~沖縄市大使
・司会 島袋良太琉球新報中部報道グループ長