沖縄県の地域外交 戦争加害の反省も必要 大城尚子(北京工業大講師)<女性たち発・うちなー語らな>


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 6月4日付「人民日報」1面で習近平中国国家主席の「琉球発言」が報道された。中国の研究者から同記事が送られてきた時、目を見張った。まさか玉城デニー知事の訪中前に習氏が福建省と琉球国に深い交流があったことや福州市の琉球館や琉球人墓、久米三十六姓に言及するとは思わなかった。

 知事の北京到着日には「環球時報」が1ページを使って玉城氏のコメントと北京通州張家湾琉球人墓地のことを掲載した。今年3月、米国務省が、訪問した玉城知事を裏口から入退館させた対応と180度異なる中国の歓迎ムードをうれしく思った。

 日本では中国の軍事化が報道されているが、日本も米軍とともに琉球諸島を軍事強化している。米軍は少なくとも2020年ごろから台湾へ特殊部隊などを秘密裏に派遣し、台湾軍の訓練に当たっている(「ウォールストリート・ジャーナル」21年10月7日)。米国が台湾に武器を売却したことや武器供与を検討している報道も記憶に新しい。

 そんな中、沖縄県は今年4月、地域外交室を設置した。同部署の目的は「アジア・太平洋地域の平和構築と相互発展に向け、独自のソフトパワーを生かして積極的な役割を果たすこと」だ。不断の努力を重ねなければ、平時は維持できない。県が独自で地域外交を行うと、内外に鮮明にしたのは頼もしい。

 沖縄の「地域外交」の核には、ハードパワーの安全保障に抗する沖縄独自のソフトパワーがある。7月4日、玉城知事は北京通州張家湾琉球人墓地を訪れた。周慶良氏が1996年に王大業の墓碑を発見し、沖縄大学の又吉盛清教授(当時)が中国の研究者と2008年に確認した。

 琉球国の進貢使、北京の国士監(大学)の留学生、救国運動の人々らは通州に到着後、通運橋を渡って北京に入った。又吉氏によると、墓地の位置をここに定めたのは、北京まで来て志を半ばに倒れた志士たちを大運河から帰国させるためだったという。

 知事はその場所で「中国と琉球・沖縄とのつながりをしっかりと結び、平和な時代、豊かな時代をつくっていくために努めていきたい」と述べた。翌日、たくさんの中国人が墓地を訪れたそうだ。知事の訪問は善隣友好を目指す沖縄的平和外交になった。

 沖縄的平和外交には、沖縄人が「過ち」を認める必要もある。又吉氏は半世紀も中国大陸、台湾に通い続け、日清、日露、日中戦争に従事した沖縄人の足跡を調査し、謝罪してきた。その結果、中国の研究者から厚い信頼を得て、学術交流を通して相互理解を深めている。近隣諸国との信頼醸成のために沖縄県にはこの点も取り入れてほしい。