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パイナップルの葉繊維から見えた世界 宇田悦子・フードリボン代表取締役社長 <仕事の余白>


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 東村の村長からシークヮーサーの次はパイナップルも、と一言頂いたことがきっかけで、パイナップルにも眠っている価値があるのではないか?と思いつきました。調べるとパイナップル加工場で出る果実の残渣(ざんさ)は、既に堆肥や飼料として使われているものの葉については活用されていないことが分かりました。

 フィリピンにはパイナップルの葉から手作業で抽出するピーニャという高級な繊維があると知り、早速、村役場に相談して、一箱の段ボールにパイナップルの葉を頂きました。その日から繊維産業へ向かう道のりをゼロからスタートさせたのです。

 繊維を原料とするファッション産業は環境汚染産業と言われ、児童労働など倫理的問題もあります。その複雑なサプライチェーンを知るほど、グローバルサウスで栽培されるパイナップル、その葉から取れる美しい繊維に、社会を変える可能性と必要性を感じました。

 そして、環境負荷を極力かけずに品質、生産性、コストを革新的に改善した機械を試行錯誤の末に開発することができたのです。

 環境汚染は待ったなしです。生産から消費後の行方を見える化し、一着の衣服を大切に長く着ること、役目を終えた後も適した方法で循環させることで環境、倫理の両課題解決の突破口を開き、ファッション産業に新しい風を吹かせたいと考えています。子供たちに繋(つな)ぐ未来をより良い方向に変えることを目指して私たちの挑戦はこれからも続いていきます。